【第6回】探査工学から見た地球と宇宙「天然水素 ― 夢の資源になるか 」 日本は「水素社会」を目指している。二酸化炭素(CO₂)を排出しない「クリーンな燃料」として注目される水素は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた重要な柱の一つとされている。しかし、以前のコラムでも述べた通り、現在流通している水素のほぼ全ては石油や天然ガスなどの炭化水素から生成される「グレー水素」である。水素の生成過程で大量のCO₂が排出され、その多くが大気中に放出されているのが現状であり...
【第5回】探査工学から見た地球と宇宙「カーボンニュートラルについて(4) 」 地熱発電について 前回のコラムで二酸化炭素地中貯留(CCS)のことを書かせていただきました。今回紹介する地熱発電も、地球を利用してCO2の削減に貢献できるエネルギーです。 地球の内部はとても熱く、日本では火山地帯でない普通の場所でも1000m掘削すれば温度は45度くらいになります。当然地球の中心部(核と呼ばれる場所)はさらに熱く、5000度を超えると考えられています。その熱は大きなエ...
【第4回】探査工学から見た地球と宇宙「カーボンニュートラルについて(3) 」 前回のコラムで、CO2フリーの水素社会を実現するには、当面の間はCO2地中貯留が重要な役割を担うことをお伝えしました。残念ながら、このCO2地中貯留は日本ではあまり認知されていませんので、ここで紹介させて頂きます。 CO2地中貯留とは、火力発電所や製鉄所などでCO2を回収し、それを地中に貯留することで、大気中のCO2の排出を減らそうというプロジェクトです。CCSまたはCCUSというキーワー...
【JITF2020】辻健「Closed Earth System: 地球・宇宙探査から考える地球の環境と防災」 辻 健(つじ たけし) 九州大学大学院 教授、工学部地球環境工学科 学科長、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 マルチスケール構造科学ユニット長、京都大学防災研究所客員教授など。地球の内部構造を可視化すること、地震や火山といった地球の動態をモニタリングすること、月や火星といった地球外天体を探査することに生きがいを感じている。一方、CO2の問題は、地球環境に対する責任から研究...