土部隆行

【第25回】英語以外の通訳市場 ~インドネシア語編~

土部隆行(どべ たかゆき)さん update:2017/08/01 「へえ、それは珍しいですね」「いったいどうしてまた……」初対面で「インドネシア語の通訳・翻訳を生業にしている」と言うと、こんな反応が返ってきます。 ナシゴレン(焼き飯)が広辞苑に載るようになっても、日本人にとってインドネシア語はいまだに縁遠く、それ一本で食べている人間はずいぶんと風変わりに映るようです。インドネ...

【JITF2020】中野真紀、宋憶萍、土部隆行「通訳・翻訳で食べるには ~多言語の実践例からヒントを探る~」

中野真紀(なかの まき) 独日・英日翻訳者。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、会社員を経て、ドイツ・ボン大学に留学。帰国後、フリーランスで翻訳の仕事を始め、並行して派遣社員として製薬会社で臨床関連の翻訳業務に携わったのち、2005年に専業翻訳者として独立。実務翻訳から出版翻訳まで幅広い分野の翻訳を手がける。訳書(共訳)に『ダライ・ラマ 子どもと語る』(春秋社)、『ドリンキング・...

【12/7】通訳で食べていけるのは英語だけ? 〜インドネシア語の危うい現状から考える〜

※本セミナーは日本通訳フォーラム2019でのセッションのアンコール版です。見逃した方はこの機会にぜひ! --------------------- 本セミナーでは、インドネシア語通訳市場のリアルな現状を紹介しながら、それを糸口に「通訳で食べていくには」という諸言語共通のテーマに迫ります。 料金設定の考え方、クライアントや仲介業者とのフラットな互恵関係、世代も専門言語の違いも超えた...

【最終回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「インドネシア語通訳の世界へようこそ」

約1年にわたってお届けしてきた本連載。最後は皆さんからの質問特集です。 事前にお寄せいただいた中から、いくつかピックアップしてお答えしてみようと思います。 ***** 【Q-1】 「クライアントやエージェントとは、お互いに必要とし必要とされ、選び選ばれ、持ちつ持たれつの対等な関係」で「こびへつらわず、必要とあらば毅然とした態度で接することも必要」。確かに理想としてはその通りなんでしょう。 ...

【第11回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「今後に向けた課題」

今回のテーマは「今後に向けた課題」です。 第3回で、次のように書きました。 ・インドネシア語の通訳サービスは、経済学でいう「市場の失敗」に陥った状態。 ・その最たる原因は、売り手と買い手の間に「情報の非対称性」(情報の偏在)が見られること。 ・買い手側にサービスの質を判断するための情報が乏しいせいで、いわゆるレモンの原理で逆選択が起きて(=安いばかりで粗悪なサービスが「悪貨は良貨を駆逐...

【第10回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「どうやって仕事を得るか(その2)~仲介業者経由の場合~後編」

(前編はこちらから) 助かる点と困る点とを考え合わせ、トータルとしてエージェントを介する価値があると確信できるか。それは「どこと組むか」による部分が大きいといえます。 この「どこと組むか」という明確な意思を持つことの大切さは、案外意識されていないようです(私もそうでした)。ここからはその辺りの話をしましょう。 通訳者の中には、登録できるところは手当たり次第に片っ端から全部登録しておこ...

【第9回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「どうやって仕事を得るか(その2)~仲介業者経由の場合~前編」

今回のテーマは、「どうやって仕事を得るか(その2)~仲介業者経由の場合~」です。 日本の通訳業界で仲介業者というと、エージェントと呼ばれる登録制・業務委託型の業態が(少なくとも今のところは圧倒的に)主流です。一般に「通訳会社」として知られるものも、大部分がこのタイプだといっていいでしょう(※)。 ※:そのため、本連載でもエージェントのことを「通訳会社」といってきました。ただ「通訳会社」...

【JIF2019】土部隆行「通訳で食べていけるのは英語だけ? 〜インドネシア語の危うい現状から考える〜」

土部隆行 インドネシア語通訳者・翻訳者。1970年、東京都小金井市生まれ。上智大学理工学部数学科卒。大学時代に縁あってインドネシア語と出会う。現地への語学留学を経て、団体職員として駐在勤務も経験。その後日本に戻り、1999年に専業フリーランスの通訳者・翻訳者として独立開業。インドネシア語一筋で多岐多様な案件に携わり、現在に至る。 通訳で食べていけるのは英語だけ? 〜インドネシア語の危うい現...

【第8回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「どうやって仕事を得るか(その1)~直請けの場合~」

今回のテーマは、「どうやって仕事を得るか(その1)~直請け〔じかうけ〕の場合~」です。 ここでいう直請けとは、フリーランス通訳者が大本のクライアントから直接依頼を受ける形のこと。間に何らかの仲介業者が入る場合については、「その2」として次回取り上げます。 日本では、今のところフリーランス通訳者の多くが通訳会社(エージェント)経由で仕事を請ける形を主としています。直請けは基本的にしないと...

【第7回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「同業者や関係者とのネットワークを築く」

今回のテーマは、「同業者や関係者とのネットワークを築く」です。 これに関して私の一番書きたかったポイントは、一足先に関根マイクさんが以下の記事で見事にまとめてくださっています。 ❏アルク『翻訳・通訳のトビラ:通訳者・関根マイクの業界サバイバル・ガイド』 【第12回】ネットワーキングの重要性 【第10回】ビジネスオーナーとして考える その1(2ページ目 の「通訳者を紹介す...

【第6回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「インドネシア語通訳者になるには(その2)~どこでどう学ぶか~」

今回のテーマは、「インドネシア語通訳者になるには(その2)~どこでどう学ぶか~」です。 前回までと同様に、「日本語を第一言語とする人が、日本国内を拠点とする場合」に絞って話を進めます。 **** まず、「どこでどう」の前に、そもそも「何を」学ぶかから考えてみましょう。 周りに尋ねたところ、多くの人は前もって予告していた今回のテーマから「通訳学校で習うような技術的な面」や「インドネシア語(特...

【第5回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「インドネシア語通訳者になるには(その1)~ルートと要件~」

今回は、志望者の皆さんからよく尋ねられる「インドネシア語通訳者になるためのルートや求められる条件」がテーマです。前回までに引き続き、日本国内を拠点とする場合に絞って話を進めます。 ****** 英語の世界では、「通訳学校を出て系列の通訳会社に登録」、「社内通訳で経験を積んでからフリーランスとして独立」など、いくつかの典型的なデビュールートがあるといいます。 インドネシア語はというと、国内では...

【第4回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「目指す方向と立ち位置を定める」

今回のテーマは、「目指す方向と立ち位置を定める」です。 これまで3回にわたって、インドネシア語の通訳という仕事が置かれた状況を概観してきました。 ここからは、「では、その中で自分はどうするか」という話に入っていきます。 前回予告したトピックのうち、リクエストの多かった「何を強みにし、市場のどの層のニーズに応えていくか」について、同じく多かった「スペシャリストか、ジェネラリストか」を切...

【第3回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「市場性を見極める」

今回のテーマは「市場性を見極める」です。予告で触れた料金設定や採算性の部分にリクエストが集中したので、多めの字数を割きました。結果としてタイトルと中身が多少ずれた感もありますが、ご容赦を。 ■三つの固定観念 インドネシア語通訳の料金設定や採算性について考える際、主に次の三つの固定観念が邪魔をしているように思います。 (1) 「相場は意識すべきだ」 インドネシア語通訳の場合、市場自体がま...

【第2回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「需給の現状と展望を知る」

今回のテーマは、「需給の現状と展望を知る」です。 まずインドネシア語の通訳全体で見ると、 ・需要は急速に高まっているのに、 ・サービスを提供する側(通訳者)の数や質が追いつかず、 ・無理押ししたツケがあちこちで出始めている という状況にあります。 これを放ったまま「今後有望な分野は?」だの何だのと言ってみても始まりません。まずは供給側の状況改善(数と質の確保)が先決だということ...

【第1回】インドネシア語通訳の世界へようこそ「インドネシア語通訳を巡る現状(概観)」

はじめに いわゆる「なるには本」をはじめ、通訳志望者に向けた情報は世にあまた出回っています。とはいえ、その多くは「英語の」という(半ば暗黙の)枕ことばが付いたもの。「インドネシア語の」となると、ほぼ見当たらないのが現状です。 仕方なく英語の世界になぞらえて考えようとするわけですが、これがそう簡単にいきません。相通ずる点もあるにせよ、何せ通訳学校の有無に始まって前提となる土台が違います。 ...

【第25回】現役通訳者のリレー・コラム「英語以外の通訳市場 ~インドネシア語編~」

(執筆・土部隆行) 「へえ、それは珍しいですね」 「いったいどうしてまた……」 初対面で「インドネシア語の通訳・翻訳を生業にしている」と言うと、こんな反応が返ってきます。 ナシゴレン(焼き飯)が広辞苑に載るようになっても、日本人にとってインドネシア語はいまだに縁遠く、それ一本で食べている人間はずいぶんと風変わりに映るようです。インドネシア語には、マイナー言語というレッテルが付いて回...