柴原早苗

保護中: 【第7回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ~a yearbook photo~

【会員限定コンテンツ】 幼少期に私はオランダとイギリスに暮らしていました。アムステルダムで通っていたのはアメリカン・スクール。よってカリキュラムは米国準拠のものでした。当時はアメリカ人の師弟に次いで日本人の生徒数が多かったですね。日本の高度経済成長期で、海外駐在員が増えていた時期でした。 その後、転入したロンドン郊外の私立女子校は英国国教会を母体にした幼稚園から高校までの一貫校。アム...

保護中: 【第47回】放送通訳の世界「遅まきながらの自動翻訳」

【会員限定コンテンツ】 放送通訳業がメインの私ですが、スケジュールの調整がつけば会議通訳業務もお受けしています。ただ、私にとっての問題点は「日英通訳への苦手意識」。いかんせん、日ごろ「英日」のニュース同時通訳が主流であるため、なかなか日本語から英語への変換活動をする機会がないのですね。 でも「通訳者」の看板を掲げている以上、「日英はデキマセン」と言うのはご法度。となると、自分で日ごろ...

保護中: 【第6回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ~the last person to…~

【会員限定コンテンツ】 CNNの同通スタジオには広めのデスクとオフィスチェア、そして目の前には現地から放映されるテレビ画面があり、私たちはマイク付きヘッドホンを着用し、自分でスイッチをオン・オフします。また、調べ物用のパソコンもあります。2名で30分ずつ交代をしながら同時通訳をするのですね。 30分の間には2~3回のCMが入ります。CM時間はおよそ数分。お知らせの前にプレゼンターが”...

保護中: 【第46回】放送通訳の世界「自分のチカラでケアしたい」

【会員限定コンテンツ】 どのような仕事であれ、その業務特有の「副作用」があります。たとえばスポーツ選手であればケガは付き物ですし、ピアニストは腱鞘炎に見舞われたりします。カウンセラーの場合、クライアントの話に共感して疲労することもあると聞きます。 では放送通訳者はどうでしょうか?私は20年以上、この仕事を続けており、いつもやりがいと使命感を抱いて臨むようにしてきました。また、ニュース...

保護中: 【第5回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから~debunk~ 

【会員限定コンテンツ】 「通訳の仕事をしていて、『業界あるある』ってありますか?」 先日、学生から出た質問です。うーん、色々思いつきますよねえ。たとえば、 「つい何でも調べたくなってしまう。気になるとすぐ検索」 「不明単語が出ると宝物を掘り当てた気分になり、意味調べに勤しむ」 「日ごろ『他者』のことばを通訳しているので、プライベートになると『自分語り』で饒舌にな...

【第23回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「自分の思いを育む~書くことを通じて~」

通訳の仕事をしていると、さまざまなトピックに触れられますよね。私自身、この業務がなければおそらく出会わなかったであろう分野がたくさんあります。医学、最先端技術、国際政治、ノーベル賞、大統領選挙などなど数知れず。仕事のたびに猛予習をして臨む、そしてその世界の著名な方々のお話を訳させていただく。本当にありがたい職業だと思っています。 こうして多様な考えや価値観に触れられるのは恩恵です。でも、私...

保護中: 【第4回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ~balance the budget~

【会員限定コンテンツ】 放送通訳の仕事を始めてから一番気にかけているのは、「必要以上の無音状態を作らないこと=放送事故」です。放送事故は放送局によって定義が異なるようですが、ラジオの場合、無音状態が「5秒、13秒、20秒」続くと放送事故だそうで、総務省に報告の義務があるのだとか。大ごとになりますので、テレビの同時通訳もやはり気を付けなければいけません。 となると、いかに無音状態を回避...

保護中: 【第45回】放送通訳の世界「悩ませ単語」

【会員限定コンテンツ】 ロンドンのBBCで放送通訳デビューをしたのが1998年。計算するとかれこれ25年間、この仕事に携わっていることになります。その間、様々な出来事が世界を駆け巡りました。順不同ですが思い出すニュースと言えば、エリザベス皇太后葬儀、クリントン元大統領とモニカ・ルインスキーさん事件、9・11事件、イラク戦争、東ティモール独立、トランプ政権誕生などなど。本当に多くの出来事があ...

【第3回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ”State’s largest employer”

アメリカ大統領選挙は4年に一回おこなわれます。実施年はオリンピックと同じ。放送通訳者にとって、その年の夏は五輪関連のニュースが増え、秋になると大統領選たけなわということになります。 しかし、大統領選挙は投票日のある11月「だけ」ではありません。実はその数年前から戦いは始まっているのです。2020年の「トランプ対バイデン」の時も、ずいぶん前から「指名候補、予備選挙、選挙人団、党員集会」といっ...

保護中: 【第44回】放送通訳の世界「くだけたフレーズ、どこまで?」

【会員限定コンテンツ】 「ロンドンで働きたい!」 そう思ったのは、イギリスの大学院生活を終えて帰国してしばらく経った頃。1年間の修士課程はハードでしたが、ロンドンの空気が自分に合っていたのでしょうね。戻ってくるや「次はどのようにしたら英国暮らしができるだろう?」と考えたものでした。愛読していた井形慶子さんの本を読んではあれこれ作戦を練るも、そう簡単にはいきそうにありません。選択肢...

【第2回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ”So steeped in history.”

訳語についてあれこれ考えるという行為。これは何も通訳ブースの中だけとは限りません。私の場合、日常生活で見聞きする英語すべてが「通訳対象」となっています。あれこれ訳語を即座に考えること。そうした瞬発力を自分に課すのはスリリングでもあるのです。 ただ、放送通訳の場合、対象はニュースです。よって、いつもそうした「ゲーム感覚」で対処できるわけでもありません。ニュースの大半は事故や事件、人々の苦しみ...

【第1回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから ”There’s always a little bit of a sour note in every chord.”

今から遥か昔、学生時代の私はジャーナリストの千葉敦子さんの本を読んで大いに感化され、「報道の仕事をしたい!」と思っていました。ただ、人生、そう計画通りには進まないもの。私自身、紆余曲折を経て放送通訳の世界に入ったのでした。 で、この放送通訳、私にとっては実にエキサイティング。何しろ最大の予習法は「新聞・ニュースをチェックすること」のみ。会議通訳であれば事前に資料を頂き、単語リストを作って臨...

【第22回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「海外ニュース、斜め上の楽しみ方」

あっという間に新年度となりましたね。ということは、2023年の残りは4分の3!ちなみに「年度」は英語でfiscal yearですが、私は通訳者デビュー当時、「年」と「年度」を混同していました。他にも「4分の3」(three quarters)などの分数が同時通訳現場で出てくると今でも緊張します。この仕事はとにかく勉強が永遠に続くのだとしみじみ思います。 さて、今回のライフハックスでは、日ご...

保護中: 【第43回】放送通訳の世界「交代のタイミング」

 【会員限定コンテンツ】 「通訳者が一度に集中できる時間は何分?」 このような問いを私は通訳講座の冒頭で投げかけることがあります。返ってくる答えは実に様々。「3分」「5分」から「30分」「60分」など、幅広いものでした。 では具体的にどうでしょうか?確かに「3分」なら、どれほど難解な内容でも、とりあえず3分頑張って訳せば交代してもらえます。が、3分経てばまた自分の番が回ってく...

保護中: 【第42回】放送通訳の世界「理想的な作業環境は?」

【会員限定コンテンツ】 通訳者としての働き方も近年変わってきましたよね。決定的だったのはやはり新型コロナウィルス。かつて対面で行われていた案件が中止またはオンラインになりました。私も急遽、ZOOMの使い方を覚え、自宅から接続して同時通訳をすることに。パートナーとの交代はLINEでの合図。同時通訳というのは慌ただしい作業ですので、とりあえずLINEでご本人と「お友達」状態になり、本番中は交...

【第21回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「やらないことを決める」

2023年になりました。昨年も本コラムをお読みくださりありがとうございます。本年もみなさまにとって少しでもお役に立てるような情報を執筆したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします! さて、新年と言えば気分も心機一転。色々とヤリタイコトも出てきますよね。私は手帳の余白ページに「やりたいことリスト」を設けています。買いたいもの、観たい映画や美術展、出かけたい場所等々です。特に期限を設...

保護中: 【第41回】放送通訳の世界「スポーツニュース、どう訳す?」

【会員限定コンテンツ】 数週間前の日経新聞で、いよいよ年内に自動通訳機が市場に出るとのニュースを読みました。メーカーのHPでデモ動画を視聴したところ、非常に高性能です。英語を日本語字幕および日本語音声で変換し、リモートでも対面でも使えます。日本語の音声を聞いたところ、確かに機械音声ではありますが、無機質ではなく、アナウンサーのような抑揚もあります。隅田英一郎氏の最新刊「AI翻訳革命」(朝...

保護中: 【第40回】放送通訳の世界「集中力アップのグッズ」

【会員限定コンテンツ】 通常のCNNシフトの場合、当日になるまで何がニュースとして出てくるかわかりません。よって、できる予習としては、せいぜい通勤途上で新聞(視認性があるので私はもっぱら紙新聞)をくまなく読み、局入りしてからは最新のニュースをネットでチェックするぐらいです。通訳準備室にはこれまでの番組がハードディスクに録画されていますので、数時間前のニュースをさかのぼって確認もします。時...

【第20回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「実務家教員は工夫がすべて」

通訳学校や大学などで教え始めてずいぶん年月が経ちました。私は大学時代に社会科と英語の教員免許をとるも、実習は社会科だけ。学生時代は様々なアルバイトをしたものの、塾講師経験は皆無でした。よって、いざ英語や通訳の指導を始めても、最初のうちは大いに戸惑いましたね。 現在は文科省の方針で、大学の正教員になるには原則として博士号が必要です。一方、実務家教員の採用は増えています。そこで今回は通訳業とい...

保護中: 【第39回】放送通訳の世界「何がヒントになる?」

【会員限定コンテンツ】 ニュースの同時通訳をしている際、何を頼りに私たち放送通訳者は通訳をしているのでしょうか?答えは、 「全部!!」 です。 会議通訳とは異なり、放送通訳現場では事前配布資料がありません。当日、テレビ局入りをして、目の前のテレビモニターで最新のニュースを観ながらネットで速報をチェックして備える。それが準備のベストメソッドと言えます。もちろん、普段...

保護中: 【第38回】放送通訳の世界「全部聞き取れ・・・ません」

【会員限定コンテンツ】 通訳業界では、 「知らない単語は聞き取れない。聞き取れない単語は訳せない」 とよく言われます。未知のフレーズが出てきた場合、そもそもの意味を知らないわけですので、訳しようがないわけです。この「哲学(?)」に出会ったのは、まだ通訳者デビューする遥か前、確か通訳スクールに通っていたころでした。ちなみに私バージョンで追加するならば、 「知らない知...

【第19回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「やっぱり備えておくが吉」

7月上旬に起きたKDDIの通信障害。読者の中にも対応に追われたという方がおられるのではと想像しています。幸い私は別キャリアでしたが、お世話になっている知人が大変な思いをしたとのこと。今の時代、スマートフォンですべてが完結できますので、どこかで不測の事態が生じると様々な影響が出てしまいますよね。 そこで今回は、「やっぱり備えておくが吉」と題して、いざという時のために必要なヒントをご紹介いたし...

保護中: 【第37回】放送通訳の世界「困った!でも止まれない」

【会員限定コンテンツ】 国際会議の同時通訳の場合、たいていは事前に資料を頂けます。資料とはすなわち当日のスケジュール、話者のプロフィール、原稿やスライド資料などです。通訳者としては、ありとあらゆる情報が助けになります。よって資料が事前にあるか否かで当日に大きな差が出てくるのですね。 一方、放送通訳の場合、当日になるまで何が出るかは不明。あらかじめネットや新聞でチェックしてヤマ...

保護中: 【第36回】放送通訳の世界「共感疲労」

【会員限定コンテンツ】 短期間で終結すると思われたウクライナ情勢。当初は「ロシアによるウクライナ侵攻」ということばが使われていましたが、最近は「戦争」という語も見られるようになりました。「戦争」は「宣言」をすることで本格化します。侵攻が始まったのは冬の終わり。そして今、私たちは夏を目前に控えているのです。 CNNでも特別体制がとられ、通常の番組が速報に切り替わりました。24時...

【第18回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「ホテル活用術」

この2年間、会議通訳もセミナーも授業もオンラインが主流となり、「交通機関を使って移動をして、現地に宿泊する」という機会がめっきり減りました。確かに、「自宅にいながらにして通訳や指導をできる」のは便利です。合間に家事をしたり宅配便を受け取ったりできますし、ラッシュの電車にもまれることもありません。でも、出張や旅というのは、現実から離れることができます。普段見慣れない光景を目にするだけでも新鮮な気持...

保護中: 【第35回】放送通訳の世界「めざせ省エネ」

【会員限定コンテンツ】 放送通訳現場では毎回さまざまなニュースがお目見えします。会議通訳のように「事前資料配布・予習」をしづらいのが特徴。ゆえに日ごろから自力でニュースに触れ、日常生活でも好奇心のアンテナを立てた状態で過ごします。すべてが自分にとっての学びとなり、ひいては現場で生かされるのです。 ただ、こうして意識を高く持ち続けたとて、本番で難儀するのもこの仕事ならでは。...

保護中: 【第34回】放送通訳の世界「どこまで溜める?」

【会員限定コンテンツ】 通訳者に必要なのは「語学力・知識力・体力」。私はこれを合言葉にしており、ジム通いも大事な業務の一環(?)です。中でもお気に入りはバーベルを使い、音楽に合わせて体を動かすスタジオレッスン。わずか30分でもたっぷり筋トレになります。 レッスンでよくインストラクターさんが使う「溜める」という言葉。たとえばスクワットの場合、しゃがんだ状態で数秒間「溜めて」か...

【第17回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「手帳・ノートとの付き合い方」

記憶をたどると私が日記を付け始めたのは小学校2年生のとき。当時暮らしていたアムステルダム日本人学校補習校では児童の日本語力維持のため、「日記を毎日つけること」が課題でした。一方、初めて手帳を使い始めたのは中2でロンドンから帰国してから。公立中学校の「生徒手帳」がきっかけでした。以来、手帳および日記やノートとの付き合いは長きに渡ります。 今月の「ライフハックス」は年初ということもありますので...

保護中: 【第33回】放送通訳の世界「お国訛り英語トレーニング」

【会員限定コンテンツ】 CNNでは様々な国のニュースが取り上げられます。キャスターもアメリカ人ばかりとは限らず。ちなみに私は90年代にロンドンのBBCで働き、2000年代初頭からはCNNメインで放送通訳をしています。CNNデビューをして間もない頃、「あれ?このキャスター、数年前までBBCにいたのに」と思ったものでした。 そう、ヘッドハントあるいはとらばーゆ(ああ、用語が古すぎ!...

保護中: 【第32回】放送通訳の世界「集中セヨ、集中セヨ」

【会員限定コンテンツ】 いきなりですが、質問です: 「同時通訳者が集中できる時間は最大何分?」 セミナーでこの問いを投げかけてみると、実に色々な答えが出てきます。「1分」というものもあれば、「60分」という回答もいただきました。いやはや、「60分集中できる魔法」があれば、ぜひぜひ頂戴したいです。 で、正解は? 通訳内容の難易度にもよるのですが、おおむね10分から...