柴原早苗

保護中: 【第31回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「自省ロク」

【会員限定コンテンツ】 学生時代に初めて著作に触れ、以来、敬愛するようになった神谷美恵子先生。神谷先生は精神科医としてハンセン病患者のために生涯を捧げました。上皇后さまのご愛読書「生きがいについて」(みすず書房)は発売から数十年経っていますが、今でも多くの読者に読み継がれています。近年、海外では「生きがい」ということばがそのまま”ikigai”と訳され、ウェルビーイングの観点から分析されて...

保護中: 【第30回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「動詞とセットで」

【会員限定コンテンツ】 8月23日に新宿で開催されたJIF日本通訳フォーラム2025。私も放送通訳についてお話する機会を頂戴しました。 https://www.japan-interpreters.org/news/jif2025-sanae-shibahara/ そこで申し上げたのが、テレビ通訳と会議通訳の違い。具体的には「沈黙」についてです。 会議の同時通訳で多少...

保護中: 【第29回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「気分は考古学者」

【会員限定コンテンツ】 数週間前のこと。久々に国際会議同時通訳の仕事がありました。私の場合、学期中は大学での指導があるため、放送通訳と授業がメイン。会議通訳は必然的に長期休暇中ということになります。 今回、その現場で初めて目撃したのが「文字書き起こしソフト」。最近、通訳者の間で爆発的に普及しているそうです。ただ、私にとってはその現場が人生初遭遇。衝撃でした。いえ、文字書き起こしソフト...

保護中: 【第28回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「AIに癒される」

【会員限定コンテンツ】 同時通訳というのは常に時間との闘い。しかもCNNやBBCなどの英語ニュースの読みスピードは世界最速とも言われます。報道番組の場合は途中にCMも入りますので、通訳者の声もほぼ同じタイミングで「着地」せねばなりません。何を拾って何を落とすのか、その取捨選択も迫られるのですね。ちなみに私は現在指導している大学の授業でCNNをベースにしたテキストを活用、そこでシャドーイング...

保護中: 【第27回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「なんてったって体力」

【会員限定コンテンツ】 数年前にコロナが猛威を振るったころ、世の中はロックダウン状態。外出もままならず、誰もが気分的に打撃を受けましたよね。そのような最中、私が出会ったのが「落語」です。それまで私が抱いていた落語のイメージは「なんとなーく古い!」というもの。着物を着たご高齢の(失礼!)男性陣が首を左右に振りながら話し続ける、といった乏しい知識でした。 ところが、たまたま日曜夕方の「笑...

保護中: 【第26回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「はっぱの語源からBTSへ」

【会員限定コンテンツ】 元外交官の佐藤優氏。かつて鈴木宗男事件で連座する形で逮捕され、東京拘置所で512日間を過ごしています。ロシア専門家である佐藤氏は外務省時代からロシア語同時通訳者・米原万里氏と親交があったそうです。佐藤氏が釈放された直後、米原氏は佐藤氏に「あなたは絶対に作家になった方が良い」と強く勧めたとのこと。「外務省は貴重な人材を喪ったけれど、私たちは素晴らしい作家を得た」との趣...

【JIF2025】柴原早苗「いつだって苦し紛れ!放送通訳のブースから」

柴原早苗(しばはら さなえ) 放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・...

保護中: 【第25回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「思い込みってコワイ」

【会員限定コンテンツ】 私が放送通訳者としてデビューしたのは1998年6月のこと。「イギリスで仕事をしたい!」という思い「だけ」でBBC日本語部(当時)の求人をThe Japan Timesで見つけ、応募したことから始まりました。それまで私はテレビ局に一歩も足を踏み入れたことすらなかったのです。日本の小学校に通っていれば、場合によっては「社会科見学でテレビ局へ」ということもあったでしょう。...

保護中: 【第24回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「形容詞・助動詞・イギリスコメディ」

【会員限定コンテンツ】 トランプ大統領が就任したのは1月上旬。まだ1カ月強しか経っていません。わずか数週間であるものの、世界情勢や貿易・気候問題など課題はまだまだ山積です。毎日のニュースは実に目まぐるしく、放送通訳の現場で同時通訳をしている私自身、「はて、昨日のニュースは何だっけ?」と思ってしまうほど。第2次トランプ政権発足直後はメキシコやカナダの関税問題がトップでしたが、本稿を書いている...

保護中: 【第23回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「1400+α」

【会員限定コンテンツ】 第二期トランプ政権が始まりました。就任式が執り行われたのは2025年1月20日(現地時間)。新たな大統領の任期開始については合衆国憲法修正第20条に「1月20日正午」と定められています。また、式典で大統領・副大統領が述べる宣誓も憲法に明記。法律と伝統にのっとり、執り行われてきているのですよね。 今回の就任式は日本の各種メディアでも中継され、私もTBSで担当する...

【5/24】鶴田知佳子と考える「通訳をするということ」~第4回「アメリカ大統領の通訳について」

日本を代表する通訳者であり、研究者としても長きにわたり最前線を走り続けてきた鶴田知佳子さんが、「通訳をするということ」についてゲストを交えて語るシリーズ企画! 第4回は「アメリカ大統領の通訳について」です。 今回のゲストは第2回企画に引き続き、CNNや民放各局でお馴染みの柴原早苗さん。皆さんは鶴田さんや柴原さんの声をおそらく米国大統領一般教書演説など、何かの放送で聞いたことがある可...

保護中: 【第22回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「さあ、また4年!」

【会員限定コンテンツ】 2024年は怒涛の1年でした。アメリカ大統領選はもちろんのこと、オリンピック・パラリンピックもありました。一方、ウクライナやイスラエルでは紛争が継続中。シリアのアサド政権は崩壊。日本では石破新内閣が誕生。自然災害では能登の地震、アメリカのハリケーン、欧州の洪水など色々なことが報道されました。とにかく話題が尽きないのがニュースの世界です。 そしていよいよ2025...

保護中: 【第21回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「今風の言葉も取り入れて」

【会員限定コンテンツ】 先日、指導先の大学生から興味深い質問を受けました。 「日本語も時代と共に変化してきたように、英語でもやはり言い回しなどは変わってきているのでしょうか?」 うーん、素晴らしい質問!私自身、あまり意識したことはなかったのですね。でも、CNNのニュースで過去の映像、それこそ第二次世界大戦のころのナレーションなどが出てくると、明らかに最近とは異なるように思います...

保護中: 【第20回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「やっぱり意訳」

【会員限定コンテンツ】 私が通訳養成所に通っていた頃、先生方が呪文のように述べておられたのが、 「通訳という行為は、何も足さず、何も引かず」 でした。つまり、話者の意図を尊重するのが第一であり、通訳者が付け足したり差し引いたりしてはいけない、ということなのですね。これはとても大事なことであると私自身、感じています。 しかし、長年この仕事を続けるにつけ、この考えもTPOによ...

保護中: 【第19回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「最上級、どうする?」

【会員限定コンテンツ】 英文法の学習で必ず出てくる「比較級」と「最上級」。中学校で習いますよね。”-er” や”-est” など、英語の形容詞にたった2~3文字を加えるだけで規模の大きさが意味として変わってくるのです。コンパクトながらスゴイと思いませんか?日本語の場合、形容詞の形そのものは変わらず、「より大きい」「最も大きい」という形になります。言語の違いは実に楽しいですよね。 さて...

鶴田知佳子と考える「通訳をするということ」

この秋から、日本を代表する通訳者であり、研究者としても長きにわたり最前線を走り続けてきた鶴田知佳子さんを迎えて、「通訳をするということ」について様々なゲストと語り合うイベントが始まります。若手からベテランまで、通訳のリアルに関心がある方はぜひご参加ください。 第1回「スポーツ通訳」 9月29日(日)14:00-15:30ゲスト:平井美樹 第2回「放送通訳」 11月2日(土)1...

保護中: 【第18回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「そしてまたもや直訳意訳問題」

【会員限定コンテンツ】  今年の猛暑は異常でしたね。日本だけでなく、全世界的に前例のないお天気になっています。オーストラリアに住む私の友人も、「8月は例年にない寒さだった」と述べていました。  近年のこうした天候も考慮しているのでしょう。かつて日本の運動会・体育祭は秋の風物詩でしたが、昨今では春におこなうケースも増えています。そう考えると、夏季五輪もこれからは南半球で実施する方が合理...

保護中: 【第17回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「どの動物?」

【会員限定コンテンツ】 このコラムを書いているのは7月中旬。その数日前にトランプ氏が狙撃されるという衝撃的なニュースが発生しました。ケネディ氏やレーガン氏が狙われたときの映像は、「歴史的資料映像」として観たことはあります。しかし、私自身が生きる今、つまり、この2024年においてそのようなことがアメリカで生じたとはにわかに信じがたいことでもあったのです。 狙撃事件の当日、私は横須賀の千...

保護中: 【第16回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「直訳でしらけるぐらいなら」

【会員限定コンテンツ】 先日読んだ「生き方」関連の本に興味深いことが書かれていました。どのようにすれば、日々ストレスをためることなく幸せに暮らせるか、という内容です。著者いわく、 「できる限りテレビやネットのニュースを見ないことが大事」 とのこと。なぜならニュースというのは悲惨な出来事や、気分が滅入る内容が多いからです。一日の始まりに暗い話題に触れれば、爽快な朝の気分が台無しに...

保護中: 【第15回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「名詞化で短縮」

【会員限定コンテンツ】  放送通訳の最大の特徴。それは「何が出てくるか本番までわからないこと」に尽きます。会議通訳の場合、事前にテーマが告知され、業務日当日に向けて猛勉強できますよね。単語リストを作成し、登壇者のプロフィールをおさえ、動画サイトや著作などをチェックしておくなどなど。やることは山積みですが、この予習部分さえしっかりとおこなっておけば、当日はよほどの「脱線」が無い限り、対処でき...

保護中: 【第14回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「四字熟語は便利(ただし条件付き)」

【会員限定コンテンツ】  同時通訳をしていると、いかに「省エネで訳せるか?」が大事になってきます。何しろ和訳を考えているうちに、ヘッドホンから聞こえる英語はどんどん先を行っているのです。悩んでいる暇はありません。瞬時に考えてそれを口にする。その繰り返しにつきます。よって、回りくどい日本語や、口の動きが上下左右に激しくなるのも私にとっては避けたいところ。短い単語で内容をズバリ表現できる和訳が...

保護中: 【第13回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「日本の文化用語に訳しちゃった!!」

【会員限定コンテンツ】  同時通訳では一瞬の判断で訳語を選んでいきます。迷う時間はありません。それどころか、少しでも黙ってしまうとそのまま沈黙all the wayになりそうな恐怖にかられます。聞き手のお客様にしてみれば、それほどの空白時間ではないはず。でも同通まっただ中の通訳者のアタマの中はこんな感じ: 「わっ!訳語が出てこない。どーしよー?関連用語でも何でも良いから、早よ、出てこ...

保護中: 【第12回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「turning of the season」

【会員限定コンテンツ】  「〇月△日 放送通訳」「*月#日 会議通訳」という具合に、私の手帳にはスケジュールが書かれています。長年愛用しているのは見開きのカレンダータイプ手帳。一カ月を丸ごと見渡せるため、その月の予定が一目瞭然です。これを見ながら、いつ、どの業務の準備をするか考え、日々のスケジュールに落とし込んでいます。 今でこそ「締め切りからさかのぼって勉強計画を立てる」を意識でき...

保護中: 【第11回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「基本動詞の難しさ~keepを例として~」

【会員限定コンテンツ】  私と通訳の出会いは今からさかのぼる事はるか前。大学時代に「少し上級レベルの英語授業を」と履修したのが通訳講座でした。他学部でしたが当時社会学科に在籍していた私も履修単位として認められたのですね。当時はfree conversationを謳う英会話スクールが華やかなりし時代。でもそれでは物足りないため受講をしたところ、一気に魅了されました。とは言え、レベルがあまりに...

保護中: 【第10回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~ 体のパーツは使える!~」

【会員限定コンテンツ】  2023年もあっという間に終わりましたね。これまで拙文「柴原早苗の通訳ライフハックス!」と「放送通訳の世界」をお読みくださったみなさま、前者は24回、後者は49回続けさせていただくことができました。これもひとえにアクセスしてくださったみなさまのお陰です。この場を借りて御礼申し上げます。本コラム「今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから」でも放送通訳現場で体験したことや...

【2/23】「スポーツ現場での通訳を語ろう」【遠隔】

スポーツビジネスの世界は造語、業界用語、 専門用語が入り乱れていますが、 その言葉だけを知っていても仕事にならない業界です。スポーツビジネスは言語力にプラス、 マネジメント力がなければなりません。マネジメント力がない通訳では最終的に選手が混乱を起こしてしま います。 また、何よりもアスリートに寄り添う気持ちが大切です。「アスリートのベストフレンド」 でもあるべき姿勢が求めら...

保護中: 【最終回】放送通訳の世界「自己反省もセットで」

【会員限定コンテンツ】 本業の放送通訳・会議通訳の他に私は「指導」にも携わっています。通訳養成所と大学です。通訳者デビューを目指す人や語学力を高めたいという思いを抱く受講生の方々がいます。 指導というのは事前の準備がカギを握ります。これは通訳の仕事同様でしょう。授業の場合は教材がありますが、内容をしっかりと読みこなすのはもちろんのこと、文法や単語について解説できるようにせねばなりませ...

保護中: 【第9回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~ 人称!人称!人称!~」

【会員限定コンテンツ】 10月下旬のこと。岸田総理が国会で所信表明演説を行いました。そこで述べたのが「経済!経済!経済!」です。私はこの3単語を聞いて真っ先に思い出したことがあります。時代をさかのぼることおよそ30年。イギリスのブレア首相が、”Education! Education! Education!” と連呼していたのです。大事なことを3つ並べて強調する。これぞ演説の要なのでしょう...

保護中: 【第48回】放送通訳の世界「涙の正体」

【会員限定コンテンツ】 10月半ば、体調に異変を感じました。疲労感以上に困ったのがのどの痛み。通訳者であり教員でもある私にとって、のどは最大の仕事道具です。これが不調ともなれば、仕事はできません。フリーランスで働いているため、休むことになれば経済的打撃です。 思い当たる理由はありました。 それは、10月7日に発生した武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃です。日本に一報が入ってきた...

保護中: 【第8回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~That comes with being a member of the United States Congress ~」

【会員限定コンテンツ】 放送通訳者にとっての必須トピックは色々あります。オリンピックは4年に一回、サッカーワールドカップもMUSTですし、災害・戦争関連の用語も押さえておくべき。中国の全人代も定期的に話題になりますし、いまだ休戦状態の朝鮮半島事情なども歴史的背景を知っておかねばなりません。 とりわけCNNで大きく取り上げられるのは何といっても米国大統領選挙。4年に一回なのですが、ここ...