現役通訳者のリレー・コラム, Page 2

【第33回】現役通訳者のリレー・コラム「フリーランス通訳者のワークライフバランス」

さてさて、この度はJACIのありがたいオファーにて、「フリーランス通訳者のワークライフバランス」とのテーマで徒然なるままに寄稿いたします。 そもそも「ワークライフバランス」とは のっけから、いただいたお題でちゃぶ台をひっくり返すような形になってしまい大変恐縮なのですが、私は「ワークライフバランス」という言葉はあまり好きではありません。 「ワーク」の対義語って「ライフ」なんでしょうか? ...

【第32回】現役通訳者のリレー・コラム「地方で通訳するメリット・デメリット~名古屋編~」

本コラムの執筆依頼を頂いた時、まだまだ経験も浅いし、知らないことも多いので、私なんかが書けるだろうかと不安でしたが、地方で通訳することについてのメリット・デメリットというお題を頂きましたので、自分のこれまでの経験で分かる範囲で書いてみようと思い、引き受けることにしました。今いる東海地域の外からやってきた通訳という視点も加えながら書いてみようと思います。 まずは私自身について少し述べさせていた...

【第31回】現役通訳者のリレー・コラム「医療通訳としての心構え」

医療通訳者の心構えといえば、どなたでも「中立性」や「患者さんとの適度な距離」をまず思い浮かぶでしょう。正直、悩みますね。現場からいくつかの事例を出しながら、医療通訳者に求められている心構えについて考えたいと思います。 バックグラウンドの尊重 まず、日本の医療現場からのいくつかの事例を取り上げたいと思います。 東南アジア出身の女性患者さんが自宅で妊娠検査をしてから旦那さんと一緒に来院しまし...

【第30回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳学校を使いこなす・後編」

5)知的好奇心を満たせる 改めて考えてみると、通訳が必要になるのはその人の人格識見が優れているから、またその経験が貴重であるから、言葉が違っても通訳という手間をかけても聞きたい、という場合が殆どであると思います。 そういう、優れた人々の見識に、しかも最先端のものにオリジナル言語で接し、他言語に訳すために深く学ぶ。非常に知的好奇心を刺激される活動だと思います。 また、受講生にも専門知識...

【第30回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳学校を使いこなす・中編」

2)通訳を行う上で必要な基礎訓練ができる 世間でよくある誤解の一つが、「英語(あるいは他の語学)ができれば通訳はできる」というもの。通訳翻訳能力を伸ばすためには、究極的には、外国語力と日本語力を磨く以外にないというのは私も同感です。しかし、「外国語を聞いて/読んで分かる」ということと、「それを他の言語で表現できる」ことには大きな懸隔があり、その差を埋めるための様々な作業、そして訓練が必要になりま...

【第30回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳学校を使いこなす・前編」

今年から「通訳訓練を始めてみたい」という方も多いでしょう。本記事では、そう思った時に多くの人の脳裏に浮かぶであろう「通訳学校」について、1)概要、2)得られるベネフィット、3)活用術などについて解説していきます。 「通訳学校」とは何か 最近、日本でも、通訳技術を学べる大学・大学院が増えてきました。しかし、これまでのところ、通訳者養成の主な担い手になっているのは民間の通訳者養成機関、いわゆる「通...

【第29回】現役通訳者のリレー・コラム「自動車業界の通訳」

(執筆・桂田アマンダ純) 「日本の自動車業界」と聞いて、皆さんが思い浮かべるのは何でしょうか。私の場合、小学生の時に教科書で見た「延々とコンテナ船に積み込まれる乗用車」「絶え間なく動き続ける工場のライン」といった写真でした。社会科見学も地元の自動車工場。国の経済を支える基幹産業のひとつであり、2015年度の世界市場においてはトヨタが名立たる欧米メーカーを退け販売数・売上においてトップとなりま...

【第28回】現役通訳者のリレー・コラム「ピースボートでの通訳経験を通じて」

(執筆・満元証) 通訳学校などを通じて通訳者として必要な技能を身につけたとしても、最初の仕事を獲得して通訳者としてのキャリアを歩み始めるための「第一歩」に苦労するという話を聞くことがあります。一度仕事を獲得してエージェントやクライアントとのかかわりができれば、それが実績となり次の仕事の獲得につながりやすくなりますが、そうしたつながりがない場合は実務経験なしから「あり」へと変える「”0”を”1...

【第27回】現役通訳者のリレー・コラム「出産・子育てのブランクから通訳復帰を目指して」

(執筆・寺山なつみ) 「このコラムを書いてみないか」と、以前何度か仕事でご一緒させていただいたことがあり、今では第一線で活躍されている先輩通訳者から連絡があったときは正直驚きました。というのも、私はここ5年近く、2度の出産、子育てのため通訳の現場から離れており、最近ようやく、通訳の仕事に戻る足がかりを模索し始めたところだったのです。スキルもすっかり錆びついてしまい、知り合いの通訳者たちは今や...

【第26回】現役通訳者のリレー・コラム「表敬訪問の通訳」

(執筆・山下朗子) 過去の連載にはフリーランス通訳者の方からの投稿が多いですが、私はインハウスでの通訳経験が比較的長く、現在も企業の社内通訳です。今回は直近まで勤務していたある自治体での経験をもとに、海外の賓客をお迎えする場面での通訳、というテーマをメインにお届けします。 私は学生時代の海外滞在経験もなく、社会人になって通訳学校に通い始めるまでは通訳者になろうとは考えていませんでした。...

【第25回】現役通訳者のリレー・コラム「英語以外の通訳市場 ~インドネシア語編~」

(執筆・土部隆行) 「へえ、それは珍しいですね」 「いったいどうしてまた……」 初対面で「インドネシア語の通訳・翻訳を生業にしている」と言うと、こんな反応が返ってきます。 ナシゴレン(焼き飯)が広辞苑に載るようになっても、日本人にとってインドネシア語はいまだに縁遠く、それ一本で食べている人間はずいぶんと風変わりに映るようです。インドネシア語には、マイナー言語というレッテルが付いて回...

【第24回】現役通訳者のリレー・コラム「冬季アジア大会 公式通訳の仕事を経験して」

(執筆・木島里奈) こんにちは。 北海道札幌市在住の木島里奈と申します。私はこのたび、冬季アジア大会に公式通訳として参加しました。その体験談と、そこで得た学びについて書こうと思います。 冬季アジア大会は、アジアの45の国と地域が加盟するアジア・オリンピック評議会(OCA)が開催する総合国際スポーツ大会です。札幌大会は、札幌アジア冬季競技大会組織委員会によって運営され、2017年2月1...

【第23回】現役通訳者のリレー・コラム「日英同時通訳で気を付けること」

(執筆・トム・エスキルセン) 表題のテーマで執筆を依頼された時、日本で宣教師をしていた父がよく言っていたことを思い出しました。たまに日本人牧師と欧米人宣教師が会議をする時、牧師が英日、宣教師が日英の通訳をすることが多かったそうですが、話がちぐはぐになったり、逆の意味で訳されたりする場面を父は何度も見てきたそうです。通訳の基本は、話し手の意図を理解し、忠実に伝えることなので、アウトプットが多少...

【第22回】現役通訳者のリレー・コラム「わたしの通訳修業」

(執筆・松本由紀子) 通訳業を仕事にしてから、あっという間に成人式を迎えるほどの年月が経ちました。 その間、思い返せば山あり谷あり、うまくいったこと以上に失敗したことも数々あり、自分なりにいろいろと経験をしてきました。まだまだ未熟者ですが、やりがいのある仕事に出会えて、自分は本当に幸運だったなと思います。今回、このような機会をいただき、通訳者になろうと思っている方、または社内通訳者から...

【第21回】現役通訳者のリレー・コラム「イギリスの通訳業界事情」

(執筆・坂井裕美) 皆さん、初めまして。わたしはロンドン在住の英日通訳者で坂井裕美(ひろみ)と申します。働きながら大学院の会議通訳コースにも通っています。小・中・高校生の3人の子どもを持つ年季入りのおばさんではありますが、通訳歴はまだ4年半です。 つまり、わたしも今、流行り(と勝手に決める)の「中年過ぎの通訳者デビュー」だったのです。それ以前は18年間、専業主婦をしていました。専業主婦...

【第20回】現役通訳者のリレー・コラム「大学院で同時通訳を学ぶということ」

(執筆・藤井里咲) はじめまして。この春に東京外国語大学大学院 英語通訳翻訳実践プログラムを卒業予定の藤井里咲と申します。私はプロの通訳者ではなく、大学や大学院で通訳訓練を受けてきた一学生ですので、本コラムを執筆する機会をいただいて驚くとともに大変光栄に思います。 一般的には、日本で通訳者を目指すなら大学院よりも民間の通訳学校に通う場合が多いです。しかし、近年は、通訳・翻訳学を学ぶこと...

【第19回】現役通訳者のリレー・コラム「わたしの転機。 そして、『ずっと長く道は続くよ』」

(執筆・橋本佳奈) このコラム執筆のお話をいただく少し前、実は、通訳の仕事を辞めたいと悩んでいました。 「本当は人前で話すことは得意ではないのに」などと、心の中でいつも苦しんでいました。でも、依頼がくると、反射的に「はい」と言って引き受けてしまう。そして、仕事の当日までもがき苦しむ。そんな繰り返しでした。「楽な仕事は世の中にはない」、「私を必要としている人がいる」「今の私にできる仕事は...

【第18回】現役通訳者のリレー・コラム「感性を活かした通訳:クリエイティブ業界の場合」

(執筆・佐藤由香) クリエイティブ業界で社内通訳を始めた時から意識していたのは、自らの感性を支えに通訳することでした。自分にとって感性とは、英語を習得する前に、音楽を通して培ってきたものであり、語学分野への進路を選ぶより前、バイオリン演奏における訓練を通して身に付いた感性こそが、通訳業務においてパフォーマンスの支えとなってきたのです。通訳キャリア第1章となったクリエイティブ業界での通訳経験と...

【第17回】現役通訳者のリレー・コラム「社内通訳の世界」

(執筆・中村いづみ) 私は現在フリーランスの通訳者ですが、過去に数多くの企業で社内通訳をしてきたことから、「社内通訳とは」というテーマでコラムを書いてほしいという依頼をいただきました。多様な通訳業界の中で、私が経験したこと、また他の通訳者から聞いた話などもふまえて、社内通訳とはどのようなものなのか述べたいと思います。社内通訳に特有でない事例もありますし、また、同じ企業でも、通訳体制やニーズが...

【第16回】現役通訳者のリレー・コラム「遅れてやってきた通訳者」

(執筆・白倉淳一) 通訳者になろうと思い立ったとき、50歳と数カ月になっていました。 学校を出てから日本の企業で28年間転職することもなく働いていましたので、通訳者になることはキャリアの大きな変化になりました。私と同じような経歴の通訳者にはまだ直接会ったことがありません。通訳学校のことや仕事との出会いなどで、少数派として何か参考になることをお伝えできるかもしれないと思い、このリレー・コ...

【第15回】現役通訳者のリレー・コラム「北欧ノルウェーに住んで」

(執筆・木村博子) 皆さん、はじめまして。北欧ノルウェーのオスロ市に住んでいる木村博子です。日本国内や英語圏内にお住まいの方々は、通訳や翻訳といえば、主に日英、英日だと思われているかもしれませんが、英語圏外に住み、多様な言語社会に生きている私達の状況はかなり違っています。 ノルウェーでの私の最初の通訳体験は、まだオスロに来て間もない頃でした。 ある会議での通訳を依頼されていた通訳...

【第14回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳者こそ読まなければならない本があるんです」

(執筆・知念徳宏) 言葉というものがその話者の個人的背景を背負って出てくるように、言語もまた、その言語圏の文化的背景を背負って成り立っています。そういうわけ で、たとえA言語圏におけるある言葉が、A言語圏の人たちにとって琴線に触れるようなものであるからといって、それを他の言語圏から来た人々に、A言語圏 に属する人と同じような感動を味わってほしいと思って通訳をしようとしても、なかなかうまい表現...

【第13回】現役通訳者のリレー・コラム「社内通訳という道」

(執筆・土井拓) 皆さんは通訳者という仕事を考えた時どんな姿を思い浮かべるでしょうか。 国際会議でスピーカーの声をブースから訳している会議通訳者。海外の要人の横で政治や経済の話をウィスパリングで訳している通訳者。ハリ ウッドスターのインタビューを訳している通訳者。上記のような通訳者が花形と思われることも多く、社内通訳者はあまり日の光の当たらない、地味な存在だと 思われがちかもしれません...

【第11回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳者になるには」

(執筆・松下佳世) 2020年の東京オリンピック開催が決まったこともあり、通訳という仕事に対する関心が高まっているようです。私が教えている大学でも、学生から「先生、 どうしたら通訳になれますか?」という質問をよく受けますし、インターネットの掲示板などでも、似たような投稿が増えている気がします。このような質問を 投げかけてくる若者の気持ちは、よくわかります。なぜなら、「通訳者になる方法」は、一通り...

【第10回】現役通訳者のリレー・コラム「フリーランス通訳と子育ての両立」

(執筆・岩瀬和美) リレー・コラムをお読みの皆さん、こんにちは。 こちらのサイトに訪れる皆さんは老若男女さまざまで、これから通訳を目指す方から既に何年も経験を積んでい らっしゃる方まで、色々な方がいらっしゃるかと思います。それぞれの立場で抱えている課題は千差万別だと思いますが、私、岩瀬和美は、「フリーランス通訳 と子育ての両立」という観点からこのコラムを書いていきますね。 続きは「翻訳・...

【第9回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳者としてお役に立つために~医療に関する通訳」

(執筆・ケイト・スイフト) 次は血液検査ですから、採血します。チクッとしますよ」 「息を吸って、吐いて。今度は深く吸って、一生懸命吐いてください」 「臨床試験では10例が終わって、自由診療に移る前にまず、先進医療Bの申請を提出する予定です。来週厚労省でアドバイスを受けます」 「その認証を取得するためには審査が必要で、全文書で140以上あり、現場でどのように運用されているかの審査も...

【第8回】現役通訳者のリレー・コラム「パラスポーツ通訳 ~大分国際車いすマラソンで学んだこと~」

(執筆・池田裕佳子) 2020年に東京オリンピックを控え、英会話レッスンを再開したり、通訳を目指して勉強を始めたりする人が増えているそうです。私もそのうちの一人。た だ、通訳学校の申込時に「オリンピックを目標にしている人は多いけれど、パラリンピックのために、という人は初めて」だと言われました。私にとってオリン ピックはニュースで結果を知る程度。一方のパラリンピックは、陸上競技となると特に、選...

【第7回】現役通訳者のリレー・コラム「フリーランス通訳になる前に 知っておきたい知識」

(執筆・マイヤーズ若菜) 私は東京出身、大阪在住の駆け出し会議通訳者です。去年まで関東の外資系企業に勤める社内通訳でしたが、夫の仕事の都合で大阪へ引越しフリーランス 通訳になりました。フリーランスになる前は、守られた会社員生活を離れる不安もありました。幸い、フリーランスで働くために必要なビジネス知識をある程度 持っていたため転身する決心がつきました。 この知識は、米国カリフォルニア州に...

【第6回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳者としてお役に立つために」

(執筆・稲垣富美子) 通訳は「お役に立ってなんぼ」の商売だと思っています。 会議通訳者をしていると、この仕事はライブだと感じます。聴衆の反応からその場で、お役に立てているかどうかが実感できる職業です。そういう職業はあまり多くないのではないでしょうか。そして、この特質は恐怖にも大いなる喜びにもなり得るものです。 ある学会での通訳業務の終了後、通訳エージェントの方から「今日は通訳用イ...