【第2回】通訳・翻訳学習記―東京外国語大学編―「春学期のスタート」

 みなさん、こんにちは。日本会議通訳者協会理事の佐々木です。

 相変わらず新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。この第2回を執筆している今はすでに2021年になり、気持ちを新たに頑張っています。早くコロナが収束し、皆様に対面等でお会いできる機会が来ることを願っている今日この頃です。

 さて、前回の第1回の最後にお伝えした通り、今回は1年目の春学期開始から中間課題を行う時期までのお話をしていきます。

1年生春学期、波乱のスタート

2020年4月に私は東京外国語大学大学院(以下、東京外大)の学生になりました。しかし、ご存知の通りこの時期日本でも新型コロナウイルスの感染が拡大しており、東京外大の春学期開始も予定から3週間延期されました。直前で入学式も中止となり、残念な気持ちになりました。

とはいえ、他の大学では1ヵ月以上開始が延期されたりする中、オンラインでしたが、比較的早く学期を開始してくだった大学に感謝しながら、各授業や演習を受講し始めました。

春学期は4月から7月までの3ヵ月間あります。私が春学期履修した科目は大まかに分けて以下の通りです。

通訳演習科目: 3科目
言語情報処理系科目: 3科目
研究関連科目: 1科目
英語演習科目: 1科目

日英通訳・翻訳実践プログラムという大学院のプログラム名にある通り、基本的に本プログラムの学生は通訳演習科目を中心に履修します。また、私の研究は「機械翻訳」が対象なので、言語情報処理科目も履修しました。研究関連科目と英語演習科目は修士課程を修了するために必修の科目となっているため、履修しました。これから各科目の概要と各科目を受けるにあたって、私が行っていたことを話していきます。

1.通訳演習科目

逐次通訳ワークショップ(日→英)

この授業では日本語から英語への逐次通訳の演習を行います。演習時は映像と音声を見聞きしつつ、メモを取り、ある程度の文のまとまり(チャンク)で先生が映像止めて、学生が英語に通訳します。学生の通訳が終わった後、先生から通訳するのに苦労した単語や表現も含めてフィードバックをもらいます。また、他の学生にもそのチャンク内で適している単語や表現の候補等があるか尋ね、少しディスカッションをすることもあります。基本的に各週で取り扱うテーマに関連した単語集を先生が事前に共有してくださるので、その日本語の単語に該当する英単語や表現を調べたり、単語集にある単語やテーマから関連しそうな単語や表現、背景知識等を主にインターネットで検索し、Wordファイルやノートにまとめたりして、各週の演習に臨んでいました。演習で通訳する際に先生や同級生から様々なフィードバックを頂けたので、非常に有意義な授業だと感じました。

逐次通訳演習(英→日)I

この授業は英語から日本語への逐次通訳の演習を行います。こちらも様々な分野の題材を逐次通訳しましたが、日英よりも政治などフォーマルな題材を多く逐次通訳した記憶があります。この授業でも基本的に演習時は映像と音声を見聞きしつつ、メモを取り、一定のチャンクで先生が映像止めて、学生が日本語に通訳します。学生の通訳が終わった後、先生が学生の逐次通訳に対するフィードバックをします。日英の逐次通訳演習と違う点が2つあり、1つは毎週、授業の最初に単語テストがあること、もう1つはサマライジング、つまり、あるスピーチの内容を要約する演習が逐次通訳をする前の準備運動としてあったことです。

この授業で行っていたことは日英の逐次通訳演習と同じく、基本的に各週で取り扱うテーマに関連した単語集を先生が事前に共有してくださるので、その英語の単語に該当する日本語や表現を調べたり、単語集にある単語やテーマから関連しそうな単語や表現、背景知識等を主にインターネットで検索し、Wordやノートにまとめたりして、各週の演習に臨んでいました。また上述した通り、毎週単語テストがあったので、空いている時間を利用して単語集の該当範囲にある単語の勉強等をしていました。今まであまり馴染みのない分野の通訳の演習をすることで、その分野にも関心を持てるようになり、テレビでその分野のニュースを見たり、新聞記事等を読んだりして少しずつ知識を蓄積するようになりました。

通訳実務

この授業では通訳の演習に加えて、通訳者に求められる能力や倫理、現場でのマナーについてのディスカッションを行います。演習は会議通訳におけるフォーマルな場でのスピーチからコミュニティ通訳の現場である自治体窓口での対応など幅広い場面を想定した通訳(逐次)を行います。また逐次演習だけでなく、原稿を見ながら訳すサイトトランスレーションを行い、2年生になってから始まる同時通訳の基礎も身につけていきます。この授業に向けての準備は上述の通訳演習と同様、単語集の作成や背景知識の学習(インターネットでの検索)を行っていました。他の通訳演習よりも通訳に関するディスカッションが多く、自身の通訳経験を共有できたり、同級生や先生の意見を聞けたりしたことは、自身の通訳者キャリアを考える上でとても参考になりました。

2.言語情報処理系科目

コーパス言語学1

この授業では、主に言語学に関連した概念等を学びます。私の研究に関連した概念(単語の出現頻度等)も学ぶことができるので、この授業を履修しました。基本的に各週の授業前に共有されるレジュメを元に、先生が各週で学ぶ言語学の概念の説明をし、不明点や質問があれば、質問するという流れで授業が行われます。特に指示はありませんでしたが、事前に共有されるレジュメを読み、分からない言葉や概念は辞書やインターネットで検索して予習をしてから、授業を受けるようにしていました。

コーパス収集と分析のための言語処理技法(1)

この授業は言語学の研究で必要なデータの収集と分析手法を学ぶ授業になっており、主にプログラミングをしながら、データ分析の演習をします。この春学期では人工知能関連のニュース等で皆さんも聞いたことがあるPython(パイソン)を使用したプログラミングを学びました。この授業では、先生がまずそのプログラミングを行って達成する目的とその目的を達成するために必要なコードをパワーポイントで示しながら説明します。説明を受けた後、実際にそのコードを入力して正しく目的を達成できるか確認します。もしエラーメッセージ等が出たときは先生に確認し、エラーメッセージの意味と対処方法を教えてもらうことで少しずつプログラミングの基礎を学んでいきます。この授業では次の授業までにやっておく課題が出されます。この授業を受けるにあたって、その課題をこなすようにして予習と復習するようにしていました。

テキストデータ分析の基礎

こちらの授業は上述のコーパスの授業に似ていますが、もう少し統計的処理と分析を中心に学びます。授業で使用するソフトウェアも違います。この授業では今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、先生が統計的処理の手法の講義を行っている動画を見て、指定のクラウド上に学んだ処理に関連する課題がアップされているので、ダウンロードして解答後、提出用の指定のフォルダに提出するという形式で進みました。この授業で行ったことは、課題と教科書の指定のページを予習として読んで処理の手法をある程度理解するようにしていました。ただ、動画を見て学んでいたので、質問等はメールを送って返信を待つしかなく、その場で質問ができないもどかしさがありました。

3.研究関連科目

通訳・翻訳学基礎研究1

この授業では、自身の研究(修士論文または修士研究)の執筆に関して必要な要件を身につけます。主に入試の際に提出した「研究計画書」を元に、先行研究の調査や先生との面談を通じてより具体的かつ明確な研究にしていきます。この授業では自身の研究に関連した先行研究の調査を主にしていました。

4.英語演習科目

English for Academic Purposes Spring Quarter

この授業では、英語論文で使用する学術英語の単語や文法を学びます。各週に出される課題とディスカッションを中心に授業が行われます。授業を受けるにあたっては、その課題を行うことと、分からない単語や表現を辞書で調べるようにしていました。

中間課題

 授業にもよりますが、東京外大では学期の中間(春学期は5月頃)と期末(春学期は7月頃)に「アクティブラーニング」と呼ばれる課題が出されます。5月頃に各授業で1回目の課題が発表されます。多くの授業がレポート課題となっており、かなり課題に追われる1週間を送りました。

今回は私が1年生の春学期に履修した科目の概要と各授業の受講の際に行っていたこと、そして中間課題の概要をお話しました。次回は春学期の期末と夏学期、そして夏休みのお話をしようと思います。まだまだ厳しい状況が続きますが、どうぞ体調に気をつけてお過ごしください!


佐々木勇介
JACI理事。東京外国語大学大学院修士1年。学部卒業後、ITおよび通信の会社2社で通算4年半、エンジニア兼社内通訳者として従事していた。趣味はイギリス発祥のスポーツであるクリケットと愛車のロードバイクで一人旅。