【最終回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「MIISの、その先へ」

皆さん、こんにちは!丹羽つくもです。10回にわたって、ニック・コンチーさんとリレーを続けてきた、私たちの母校・ミドルベリー国際大学院(Middlebury Institute of International Studies at Monterey)についての連載も、今回で最終回となりました。

今回は、卒業後の進路の紹介をさせていただく投稿なのですが、まず始めにおことわりしてお
かなければいけないことがあります。実は私、個人的な諸事情により正式な卒業は少し後にな
る予定です。前回のニックさんのように晴れて卒業!とはなっていないのですが、あくまで
「MIISの2年間が明けてからの最初の一歩」の参考として、温かい目でお読みくだされば幸いで
す。

最初の数週間(同級生の場合)

これはあくまで私の「肌感」でしかないのですが、(全言語を含めて)同級生の進路としては、半数ほどがフルタイムの仕事、半数ほどがフリーランスという感じです。また、3分の1ほどは留学生で、アメリカでの労働資格を持っておらず、OPTというビザで、自分の卒業したプログラムに関連した内容の仕事に1年だけ就くことができるという制度を使っています。目的としては、その1年の間に就労ビザのスポンサーとなってくれる勤務先を探す・・・ということだと理解しています。また、政府や大企業がスポンサーとして留学費をまかなっているため、卒業後はそこで何年か働く契約になっている、という同級生も数名いました。独身で動け回る、または帰る実家がある人は、アメリカ中ないしは世界中を駆け巡って、新しい機会を手に掴もうとしている姿勢がみられます。その一方で、パートナーや子供がいる同級生も少なからずいるので、そうすると(どの仕事・学位でもそうですが)大学院修了後の家族と仕事のバランスを考え直すタイミングに来ているのだと思います。私も実際それで苦労していて、先輩からアドバイスをもらっている立場です。

日本語プログラムに限っていうと、私以外は皆さんフルタイムの仕事に就いています。勤務先は日本・アメリカどちらもあります。コロナ後、採用状況はガラッと変わりました。その中でも、自分のつてや、粘り強いリサーチ力、卒業生のネットワークなどを駆使して、在学中から皆さん頑張っていたのだと思います。数年(十数年?)前とは違い、アメリカでの労働資格を持っていないと、アメリカの日系企業での就職もままならないと聞きます。移民手続きはより困難に、高額になるばかりですし、仕方ないといえばそれまでですが・・・それによって、企業のニーズと人材のミスマッチが起こってしまうことが残念でなりません。

最初の数週間(自分の場合)

学期末からの数ヶ月、私はドタバタの生活をしていました。私生活では、モントレーで出会った旦那とのテキサス州への引っ越しがあったため、あっという間に時間が過ぎていきました。その合間に、いくつかのパートタイムの仕事を始めました。その半分ほどは、大手IT企業のクラウドサービスに関する翻訳の校閲を行う仕事です。他の半分、電話通訳やビデオ通訳(逐次・同時)、ウェブマンガの翻訳・校閲、日本語ビッグデータ解析のアドバイザー、配信動画の字幕翻訳、ジェンダー研究者専属の通訳・・・など、バイリンガル・バイカルチュラルの経験を生かして様々なアサイメントに取り組み始めました。よく言えばフリーランスですが、悪く言えば完全フリーです(苦笑)。給与や福利厚生をしっかり持って帰ってきてくれるパートナーがいるからこのような生活もありですが、この予想不可能な収入環境はなかなか難しいな・・・と痛感しています。

NAJITの会合に参加した時のバッジとプログラム。奨学金をもらっていたため、特別なリボンがついていました!

最初の数ヶ月

仕事を始めた以外にも、いくつか貴重な経験をさせていただきました。まず、2022年6月には、フロリダ州で行われた全米法廷通訳翻訳者協会 (NAJIT)の年次会合に、奨学金を受け取って参加することができました。毎年5人ほどが選ばれるこの奨学金プログラムの授与者は、会合前日の夜から法廷通訳翻訳界の「大御所」たちの集まるレセプションやディナーに誘われ、会合中も様々な言語のメンターや先輩通訳者たちが目をかけてくれるという、とても贅沢な環境で多くを吸収できます。コロナ禍が始まって以来初めて対面のカンファレンスに参加したのですが、やっぱり対面に代えられない部分はあるな・・・と実感しています。

また、8月には、JACIの「日本通訳翻訳フォーラム2022」にて、岩辺いずみ先生、森千代先生のワークショップのMCをさせていただきました。オンライン開催であったことや、アメリカ在住で時差の関係でも参加しやすかったということもあり、お手伝いできたことはとても光栄です。さらに、Tony Rosadoさんのセッションでは第1回・第2回とも日本在住の通訳の方々と同時通訳をすることができ、異なるスタイルの通訳者から学ぶという貴重な経験だったと思います。運営委員の皆さん、本当にお疲れ様でした。

最後に

いかがでしたでしょうか。ここまでの連載で、何か一つでも参考になったことがあれば、とても嬉しいです。私たちのMIISについての連載は今回で最後となりますが、各ポストに連絡先も記しているので、ご感想、ご質問等ありましたらいつでもご連絡ください。ここまでお付き合いしていたくださった方、遠方からでも応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

ありがとうございました!

丹羽 つくも Tsukumo Niwa

2020年より米ミドルベリー国際大学院モントレー校(MIIS)在籍。10歳から海外子女として育ち、現在は米国在住。自動車部品メーカーにて社内通訳として3年間勤務した後、会議通訳者を目指してMIISへ進学。第3回 JACI 同時通訳グランプリの学生部門でグランプリを受賞。

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