【第19回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「やっぱり備えておくが吉」

7月上旬に起きたKDDIの通信障害。読者の中にも対応に追われたという方がおられるのではと想像しています。幸い私は別キャリアでしたが、お世話になっている知人が大変な思いをしたとのこと。今の時代、スマートフォンですべてが完結できますので、どこかで不測の事態が生じると様々な影響が出てしまいますよね。

そこで今回は、「やっぱり備えておくが吉」と題して、いざという時のために必要なヒントをご紹介いたします。

1.やはり強みとなる現金

 先の通信障害で多くの人が頼りにしたのが「公衆電話」。最近は見かけなくなりましたが、回線がしっかりしている公衆電話や自宅の固定電話はやはり災害に強いと言われます。外出先で公衆電話を使う際に必要となるのが「現金」。私はクレジットカードも使いますが、念のため現金は持ち歩いています。目安は「都内から自宅までのタクシー片道料金」。東日本大震災当日は職場に一泊するも翌日は電車が満員で乗れず。幸い、タクシーに現金で乗ることができたのです。以来、お財布にはタクシー料金および電話代となる小銭(10円玉と100円玉)は必ず入れるようになりました。また、テレホンカードも常備しています。

2.免許証と緊急連絡先メモを一緒にしておく

もし意識不明の状態になった場合に備えて、私は免許証と共に自分の名前・住所・血液型および緊急連絡先をメモした紙を一緒に持ち歩いています。私の身元を免許証で確認する際に役立つと思うからです。これらをスマホケースに入れ、少額のお札と小銭も同じ場所に収納しています。

3.水・非常食・小型ラジオ・マスク

 なるべくカバンは軽くして出歩きたいのですが、災害時に必要となるのがお水と非常食。よって私はマイボトルを持ち歩き、帰宅するまでは水分が空にならないようにしています。家に戻り、最後の一口を飲み干したら「今日も無事帰宅して良かった」と安堵できますよね。一方、非常食として持ち歩いているのがプロテインバー。こちらは元々通訳時の空腹用に携帯していたのですが、とりあえず200カロリー弱のものがあれば、お腹を満たすことができるでしょう。小型ラジオは単4電池で動くタイプです。スマホのradikoでも良いのですが、スマホのバッテリー温存のために消費電力の少ない小型ラジオを持ち歩いています。マスクは化粧ポーチに予備を一枚入れています。

4.レジ袋・筆記用具・ノート 

 筆記用具は手帳にさしてある多機能ペンに加えて予備を1本バッグに入れています。ノートはA5のリングノートで、バッグに収まるサイズです。リングノートなので切り離すことも簡単にできます。私はこのノートを備忘録、日記、仕事ノートとして使っています。以前は用途別に複数のノートを作っていましたが、時系列に一冊に収めることにより、後日調べ直したり振り返ったりしやすくなりました。レジ袋は買い物時に使いますが、それ以外にも急に出先で荷物が増えたときや雨よけなどで威力を発揮します。

5. やはり紙ベースで保管

 スマホやPCで連絡先やパスワード管理などが安全にしやすくなりましたよね。それでも万が一に備えて私は紙ベースで保管しています。パスワードはリングでとじる単語帳をもっぱら愛用。アルファベット順に並べています。不要になったら取り外して処分できますし、並べ替えも簡単です。一方、LINE通話やLINEビデオで頻繁に連絡する相手であっても、念のため先方の携帯電話番号は手帳に控えてあります。連絡頻度が高いということは、それだけ非常時の要連絡度も高くなるわけですので、LINE以外の連絡方法が必要となるからです。

6. 地図を読めるようにしておく

 私は幼いころから紙地図を眺めるのが好きで、今でも時間があるとつい地図を読みふけってしまいます。東海道新幹線に乗るときは通過する静岡県や滋賀県などの紙地図をカバンに入れ、車窓の景色と地図の地点を確認するのがもっぱらの楽しみなのですね。一方、太陽や月の位置、高層ビルや山などのロケーションを確認しながら「今、自分は南に向かっているから、目的地までのルートはこれで大丈夫」などの基準も持っています。今の時代、スマホやカーナビに従えば安心して移動できますが、やはりいざという時のために基本的な地図読解能力は押さえた方が良いと思います。それこそAEDや消火器の使用訓練同様、防災教育の一環として実施されればと願う次第です。

以上、今月は非常時に役立つヒントをご紹介しました。ところで地図好きが高じた私は数年前のロンドン旅行の際、大英図書館のMaps Reading Roomを利用してみました。

https://www.bl.uk/visit/reading-rooms/maps-reading-room

大英図書館の地図部門は2000年以上前の地図も所蔵しており、地図に関連するあらゆる資料がそろっています。私のようなcartophile(地図好き)にとってはたまらない空間です。


柴原早苗(しばはら さなえ)

放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも担当。「放送通訳者・柴原早苗のnote」(https://note.com/sanaeinterpreter/) も日々更新中。