【第1回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「時間管理」

私はこれまで時間管理術や手帳術などで試行錯誤してきました。今回は時間の使い方に関して日頃心がけていることをご紹介いたします。参考になれば幸いです。

1.手帳は常に開いた状態で
私が愛用しているのは4月始まりの紙の手帳です。これは指導先の大学が4月から新年度であるためです。最近は1月、4月、9月始まりなど手帳も多様化していますので、自分にとって使いやすいものを選ぶと良いでしょう。私は「今日のページ」を常に開いておき、思いついたことは書き込み、一つずつこなすようにしています。

2.メモ用紙を持ち歩く
手の平サイズのメモ帳を私は常に携帯しています。移動中に思いついたことをサッと書くためです。かつては市販のメモ帳を使っていましたが、幸い我が家にはA4の裏紙がたくさんありますので、それを8分割にしてホチキスで止めています。裏紙ですので惜しみなく使えるため、一項目一枚と決めて備忘録として活用しています。

3.立ち机の活用
自宅でのPC作業が多いと首や肩の痛みに悩まされます。そこで机に座卓を載せて立ち机にしてみました。立ったままですので、すぐに動けますし、眠気防止にもなり、ストレッチもパッとできます。何よりも集中度が増したので時短につながりました。

4.隙間時間にできることを箇条書きにしておく
私は日頃、1分、3分、5分、10分という具合に、それぞれの長さでできる家事や勉強法を考えています。「電子レンジで5分間ご飯を温めている間に音読」「信号待ちの1分で新書の1章を斜め読み」「10分かけて原稿のアウトライン作成」という具合です。やるべき作業をまずは細分化して攻めていくのも一案です。

5.思いついたら「とりあえずやる」
「うーん、窓の桟が汚いなあ」と思った時、「ま、いつかきちんと掃除しよう」とかつての私は思っていました。けれどもその「いつか」というのは「いつになっても来ないもの」なのです。大事なのは「完璧を求めず」「すぐ取り組むこと」。桟が汚れているならとりあえずティッシュで目立つ汚れをふき取れば良しとします。「とりあえず」で良いのです。

6.世の中の流れには冷静に
たとえば年末。ネットでも雑誌でもテレビでも「大掃除」の大合唱となります。けれども私の場合、年末は仕事もあわただしく、掃除の時間を捻出するのも容易ではありません。よって数年前から「世の中は世の中、ウチはウチ」と思うようにして目立つ箇所だけ掃除するようになりました。要は世の中の流れに対して冷静に対処することです。

7.外注する勇気を
今から10年ほど前のこと。年末大掃除の波に乗らねばとばかり、台所の換気扇を徹底掃除しようと思い立ちました。手帳には「□ 換気扇分解掃除」と書き出し、日時も決めました。ちなみに□はチェックボックスで、私はやるべき項目をすべてチェックボックス付きで書き出しています。仕上げたら☑を入れることで大きな達成感が得られるのですね。換気扇掃除もそのような感じで仕上げようと思っていました。ところが来る日も来る日も着手できず、結局半年間毎日「□ 換気扇分解掃除」と手帳に繰り越しながら書き続けたのです。ここまで先延ばしにしたということは、要はその作業を自分は得手とはしていないわけです。そこで家事代行会社にお願いしたところ、わずか数時間でピカピカに仕上がりました。作業中、私は別室で勉強ができましたので、「自分よりも上手にできる人がいるのならば、有料でも頼もう」と思ったのでした。

8.「ノー」という勇気も
フリーランスで通訳をしていると「いただいた仕事はありがたくお受けする」というメンタリティになります。別の見方をすれば「仕事をしない=収入ゼロ」でもありますので、仕事を断るというのは大きな勇気が必要でもあるのです。病気休暇も介護休暇も育休も慶弔休暇もないのがフリーランスです。仕事をすることがややもすると強迫観念にさえなり得ます。仕事「だけ」に専念できれば良いのですが、家事や家族、地域との関わりや介護など、生きていれば様々な課題があります。すべてに対して良い顔をすることは不可能です。よって自分の中で優先順位を考え、たとえ嫌われることになるとしても勇気をもって「ノー」ということも必要だと私は考えます。

9.やらないことを決める
先の「ノー」ともつながりますが、優先項目を考える際、「この項目は本当にやらなければいけないのか?」と自問自答することも大切です。私は数年前、Facebookの閲覧書き込み時間がどんどん増えているのを痛感し、タイマーで計りました。その結果、Facebookに携わっていた時間は実に2時間を超えていました。しかも私の場合、ダラダラとやっていたのです。「このままでは大好きな本が読めない」と思った私は、その日を境に退会しました。おかげで少なくとも2 時間は読書やその他の作業に充てられるようになったので、今でも良かったと思っています。これは一例にすぎませんが、自分にとって「やらないこと」を勇気をもって決めるのも一案だと思います。

10.誰のための人生?
以上のように私はあれこれトライしてきました。けれどもこれで完璧とは思っていません。むしろ改善の余地はまだあると感じます。そして一番大事なのは、「誰のための人生なのか?」「何のために自分は今という瞬間を費やしているのか?」を客観的にとらえることだと思うのですね。やらされ感満載の日々を不満だらけでこれからも過ごすのか、それとも少しでも「ああ、今日も楽しかった」と思いながら眠りにつくのか。そう考えると自分自身の人生にどう向き合うかということになります。二度と戻らない「今」だからこそ、大切にしたいと思います。

いかがでしたか?今回は時間管理について10項目をご紹介しました。読者の皆さま、「こういう時間活用もあります!」というご意見がありましたら、ぜひお知らせくださいね。お互いに充実した毎日を送っていきましょう!


柴原早苗(しばはら さなえ)

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳業に従事。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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