【第5回】通訳・翻訳学習記―東京外国語大学編―「秋学期末試験から1年目終わりまで」

 皆さん、こんにちは。日本会議通訳者協会理事の佐々木です。

 梅雨もあけて、いよいよ夏ですね。新型コロナウイルスの感染拡大も続く中、熱中症にも気をつけないといけませんが、体調管理をしっかりとしていきましょう。

さて、今回は一年次秋学期期末試験、冬学期そして春休みのお話をします。

一年次秋学期期末試験

授業にもよりますが、秋学期の期末試験は1月にあります。第3回の春学期期末試験でお話したのと同様に、秋学期期末試験でも演習科目では実践的な試験が実施されます。今回も簡単にですが、ご紹介します。

「逐次通訳ワークショップ(日→英)」の授業では、単語リストが試験1週間前に共有されます。まず、そのリストにある単語や表現の意味を調べます。さらに、それを元に、インターネットでテーマに関連した情報を収集し、背景知識を身につけて、試験に臨みました。

「逐次通訳演習(英→日)II」も上記の「逐次通訳ワークショップ(日→英)」と同じく、試験の1週間前に単語リストが共有されます。基本的に、単語リストにある語句の意味とインターネット検索による背景知識の習得を準備段階で行いました。また、今回はテーマが具体的だったこともあり、講演者がスピーチをしている動画を視聴することで、話し方の特徴を把握するなど、より実務を想定した準備をしました。試験から10日ほど経過して、先生から評価と通訳パフォーマンスに関するコメントをいただき、良かった点と改善点を確認して、現在自分にどの程度の通訳能力があるかを認識することができました。

言語処理系科目である「コーパス収集と分析のための言語処理技法(2)」では、春学期よりも少し高度なプログラミングを駆使してデータ分析を行い、その分析結果をレポートにまとめました。授業で先生から共有されたスライドで復習をしながら、分析を行い、その分析結果をレポートにまとめました。

次は冬学期のお話をしていきます。

・冬学期:「通訳翻訳学」

 冬学期は1月下旬ごろから2月上旬ごろまでの期間に各講義が開講されます。第3回で紹介した夏学期と同様に、冬学期についても集中講義という形式になっています。

 冬学期に受講した「通訳翻訳学」の授業は、通訳理論や音声学など通訳に関連する内容が中心でした。授業は先生による説明と学生のプレゼンテーションで構成されていました。この講義が開講されているあいだ、担当の先生が教えられている他の大学の学生によるプレゼンテーションを聞く機会もあり、通訳研究に対して幅広い視野を身につけることができました。この授業の中間試験および期末試験はレポートでした。気が付くと、冬学期の授業もあっという間に終わっていました。

  • 修士論文・修士研究発表会の逐次通訳

冬学期が終わってから1週間後、修士2年生の修士論文・修士研究発表会が行われました。日英通訳・翻訳実践プログラムでは、毎年2月中旬ごろに修士論文・修士研究発表会が行われ、2年生による研究の成果を一年生が逐次通訳することになっています。

事前に担当する2年生の方から資料をいただき、不明点や質問等あれば、メールなどで確認し、準備しました。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オンラインでの開催となりました。当日は音声や回線の確認も行ってから、通訳に臨みました。

逐次通訳終了後には、担当した2年生の方や先生方から通訳パフォーマンスに関するフィードバックをいただきました。フィードバックや通訳中に気づいたことを通じて、今の自分の通訳における課題を認識することができました。率直な感想として、発表の後半に疲労で集中力が下がり、誤訳や言い淀みが多くなったことがとても悔しかったです。

この発表会が終わってから、春休みに入りました。

  • 春休み

春休みは2月中旬ごろから4月初旬ごろまで約2か月間あります。この期間、上記の修士論文・修士研究発表会や授業でいただいたフィードバックを元に、To Doリストと予定表を作成し、通訳スキルの向上を図りました。主に英語の語彙力と文法(時制を含む)が課題だったため、少しでも改善することに集中しました。

語彙力に関しては、授業で使用した辞書を毎日一単元ずつ覚えました。この辞書を二周読み返し、単語や表現の記憶への定着を図りました。文法と時制は、実家から高校生のときに使用した文法書を送ってもらい、こちらも毎日一単元ずつの復習を二周しました。これらの勉強法を実践したことで、普段の通訳練習で専門用語などを少しだけですが、即座に訳出できるようになりました。しかし、まだ2か月しかしていないため、定期的に復習し、今後の授業や卒業後の実務においても対応できるようにしていこうと思っています。

今回は、一年次秋学期期末試験、冬学期そして春休みのお話をしました。あっという間に学生生活1年目が終わり、驚いています。

次回は、二年次春学期開始と春学期中に行われた通訳実習の概要をお話しします。


佐々木勇介
JACI理事。東京外国語大学大学院修士1年。学部卒業後、ITおよび通信の会社2社で通算4年半、エンジニア兼社内通訳者として従事していた。趣味はイギリス発祥のスポーツであるクリケットと愛車のロードバイクで一人旅。