【第7回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「MIISの2学年目:授業内容と環境が変わっていく!」

皆さん、こんにちは!ニック・コンチーです。今年の2月にJACI主催のパネルディスカッションに参加させていただきました。様々な大学院の通訳プログラムについて興味深いお話ができてとても楽しい時間を過ごすことができました。JACIの関根様にお声がけいただきましたこと、そしてご覧いただいた皆様に大変感謝しております。

早速ですが、今回はMIISの2学年目の授業内容について書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

通訳授業の環境が変わった2学年目

2学年が始まる前に、私はとうとうモントレーに引っ越すことができ、新しい授業内容だけではなく久しぶりの対面式授業に慣れる必要がありました。夏休みの間に参加していたインターンシップと同じく、対面の方がズームより姿勢や声の出し方など通訳の物理的な面にもっと注意しなければならないなと実感しました。そして初めてブースで通訳することを体験しました。私はギターを演奏することが好きで、ライブで演奏した経験もあるのですが、パンデミックの間はもちろんこのような機会がなかったので、久しぶりに舞台に立っているようなライブ感を楽しめて嬉しかったです。ブースに入る時は緊張感が少しありますが、アドレナリンも出ますし、「本格的な通訳体験」だなと感じます。パンデミックが長引き、遠隔通訳がますます普及してきましたが、将来対面で通訳することになった場合は、ブースにある技術に慣れていないと大変なので、このようにブースでマイクの調整などの練習ができることは貴重な機会だと思います。

 同時通訳の練習中
モントレーの山から町を見下ろした景色

授業の内容や目的について

環境と共に授業内容も変わりました。全体的に「技術やビジネス」についての内容が多くなり、テーマもより幅広くなりました。1学年目(特に秋学期)は、「通訳に慣れること」が主な目的の一つだったので、一般的な内容がメインでしたが、2年目の秋学期の初日からは、国際会議の演説や外資系企業の発表など、通訳者が職場で実際に触れるような内容に取り組んでいきました。翻訳の授業もより専門的になっていったため、様々な専門用語を調べたりユーチューブを使って専門家の演説を聞いて日々練習したりしていました。1年目の春学期の続きとして金融業界について通訳することもありました。

前回お話ししましたが、2年生は全員夏休みにオリンピックをはじめ、インターンシップやフリーランスなど通訳の実務を色々身につけてきました。実務を通して授業で学ぶ通訳スキルを、どこが授業と違うのか、どこが特に重要なのかなど、また違った観点から考えることができるようになり、自信アップにつながりました。2年生は、訳出中の間違いがないことが大前提になり、内容の正確さだけでなくパフォーマンスや表現の向上も求められてきます。通訳の条件の難易度がこのように徐々に上がっていくため、自分が上達していないと感じる時もありますが、仕事で失敗しないようにまず授業で繰り返して失敗する必要があることを忘れてはいけません。MIISの教育概念を英語でよく聞く一言で表すと、「Train hard, fight easy」(練習は厳しく、本番は楽に)です。まさにその通りだと思います。このように鍛えられていくことで、卒業後にどんなに大変な仕事に当たっても乗り越えられるでしょう!

同級生との練習

1年目と変わらず、授業の準備としては練習会が必要不可欠です。1年生のときはまだ初めましてで、なかなか本音でぶつかることは少なかったですが、2学生になるとすでに一年間練習してきているので、本音で正直にお互いへのフィードバック交換ができるようになったと思います。練習に付き合ってくれる同級生が、将来、友達であり同僚にもなることを考えれば、練習会を通して絆を深め、お互いの良かった点、もう少し頑張れる点について客観的にフィードバックを交換し合えることが将来への投資になると思っています。

「厳しいフィードバックをもらうのが怖い」、「同級生を傷つけたくないからよくできたところだけを褒めてあげる」など、守りのフィードバックを交換する方が多いと思います。しかし、特にできなかったところについて細かくフィードバックをもらうことで、自分が気づいていなかった口癖やエラーへの認識が高まり、最終的に間違いなく上達につながります。つまり、正直なフィードバックをもらうため、するためには、クラスメイトと絆を深めることが大事なのです!

新学年が始まるともちろん新しい1年生が入学し、2年生が先輩になります。ただ、大学を卒業したばかりの学生から数十年もの経験があるプロまで、多様な人々が同じプログラムで集まることがMIISの大きな特徴です。「1年生」と言っても、2年生より年上で経験が多い学生がいることは全然珍しくないので、学年を問わず、一緒に練習して情報交換し、切磋琢磨していくことがとても重要だと思います。

 私の話はここで終わりたいと思いますが、次回はつくもさんが引き続き2学年目の内容について書いてくれますので、お楽しみに!


ニコラス・コンチー Nicholas Kontje

ミドルベリー国際大学院モントレー校在学中(2022年5月に卒業する予定)。専攻は日本語の翻訳・通訳。入校前、国際交流員としてJETプログラムに2年間参加し、帰国後は旅行業界で勤務。副業でフリーランス翻訳・通訳として活動する。

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