【第6回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院編「通訳の実務経験あふれる夏休み②」

皆さん、こんにちは!ニック・コンチーです。遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。2021年は連載をご一読いただき誠にありがとうございました。引き続き2022年も皆さんに楽しんでいただけるような記事を書いていこうと思いますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。前回はつくもさんがオリンピックの遠隔通訳体験について説明しましたが、今回は私がオリンピックと同時に参加していたインターンシップについてお話ししたいと思います。

ダイキンのインターンシップ

現場での通訳
テキサスならではのカウボーイハットをゲット! 

                                 

2021年の初頭、私は逐次通訳を少ししか勉強しておらず、同時通訳の経験もありませんでしたが、夏休み中に逐次・同時一気に両方の通訳経験をする機会に恵まれました。

MIISの卒業生が空調業界で有名な企業であるダイキンで勤めており、毎年MIISの学生に対して社内通訳インターンシップを提供してくださっています。MIISのコネクション力は大変有名で、ここでできる「コネ」はキャリアアップのための大きな財産になるとよく言われています。数的には分かりませんが、通訳のインターンシップを提供している企業はかなり少ないと聞きます。MIISならではの素晴らしい人脈により大変貴重な機会をいただきました。

ダイキンの巨大な工場はテキサス州ヒューストン市の郊外にあるウォーラーという町にあります。今回はパンデミック中だったため、インターンシップの参加は対面あるいは遠隔から選ぶことができました。対面であれば工場の見学もできますし、遠隔の場合に比べて通訳を体験する機会も多いかなと思い、折角なので対面で参加することにしました。また、一年ずっとオンライン授業を受けてきたところだったため、久々に旅行できるというのも対面を選んだ理由の一つでした。

インターンシップのために6月上旬にテキサスへ引越し、8月中旬までの2カ月半をウォーラーで過ごしました。このインターンシップの主な目的は「製造業および社内通訳の仕事に親しむ」ことでした。ダイキンや空調業界などについて学んだり、通訳の練習も定期的に行いました。今回、私以外に通訳インターンシップ参加者が2名いましたので、3人で練習することがよくありました。また、ダイキンの正社員通訳者と練習をする機会もありました。ダイキンには正社員通訳者が数名在籍しており、ズームで会議を通訳しているところを毎週見学させていただき、社内通訳者がどのように仕事をするのかを特等席から見て学ぶことができました。

特に印象に残ったのは、会議内容がヒートアップし通訳内容が入り組んできても訳出が乱れないことでした。訳出のリカバリーがとてもスムーズで、重要な情報を的確に探し出し、遅れを取り戻しているパフォーマンスを見て、さすがプロだなと実感しました。また、正社員通訳者と一緒にディスカッションをする機会も数回ありました。ディスカッションの内容は幅広く、今までの経験や通訳のコツ、専門用語などについて色々貴重なお話を聞かせて頂きました。

そして見るだけではなく、学んだことを応用し毎週2回改善会議を通訳させていただきました。改善会議は工場内の供給の流れについての会議で、エンジニアたちと現場を歩き回りながらの通訳となりました。私は経験のない学生だったため、まずは数週間の練習やトレーニングを行って基本的な能力を身に着けることから始めました。そして本格的な通訳業務を始めた時、正社員通訳者1名が「メンター」として同行し、私が専門用語などに困った時にサポートをしてくださいました。後に、この方はMIISで教えてくださっている先生の元同僚だということが分かり、その話で大変盛り上がりました。さすがMIISのコネですね。

会議が終わったら、分からなかった単語を調べ、正社員通訳者に確認することにしていました。毎週同じエンジニアたちと改善について通訳していたので、先週上手く訳せなかったところを次回はスムーズに訳せるように心がけていました。エンジニアたちの性格や話し方、改善に関する専門用語などに慣れれば慣れるほど訳出がスムーズになり、個人的な「改善」も実現できたと思います。

ダイキンは通訳だけでなく、工学部の大学生にエンジニアリングのインターンシップも提供しています。今回は数十人の大学生がアメリカ全国から集まり、対面でインターンシップに参加していました。インターンシップの必須項目として何らかのグループプロジェクトに参加する必要があり、私がアサインされたグループは工場内の空気管を検査するプロジェクトでした。空気の漏れがコスト上昇や環境汚染につながるため、超音波検出器で漏れを探し、その箇所に札を付け修理担当者に報告することが主な業務で、最後にプロジェクトのプロセスや結果などについてグループでプレゼンを行いました。これは通訳業務と直接関係がないように聞こえるかもしれませんが、社内通訳は作業員から社長まで全社の部署の業務を把握する必要があるため、エンジニアがどのような課題に取り組むのかを知ることは、全体を理解することにつながる良い学びの機会だったと思いました。

このインターンシップを通して今までまったく知らなかった製造業について理解を深めることができ、また学んだ内容をすぐ実務に活かせたことは具体的なスキルアップにつながったなと感じています。非常に有意義な夏休みを過ごすことができました。

次回はいよいよMIIS学生生活2年目についての紹介となりますので、お楽しみに!


ニコラス・コンチー Nicholas Kontje

ミドルベリー国際大学院モントレー校在学中(2022年5月に卒業する予定)。専攻は日本語の翻訳・通訳。入校前、国際交流員としてJETプログラムに2年間参加し、帰国後は旅行業界で勤務。副業でフリーランス翻訳・通訳として活動する。

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