【第4回】通訳留学奮闘記~梨花女子大学校通訳翻訳大学院編~「留学生活のお金事情(奨学金いただきました!)」

34歳でハングル文字から韓国語学習をスタートさせ40歳を目前に韓国の通訳翻訳大学院(=通大)に入学した私が、「通訳のための海外留学」のリアルな実態をお届けします。

今回は「留学生活のお金事情」と、いただいた奨学金についてです。

当然ながら、タダでは勉強できない

留学を検討している方からよく受けるのは「何にどれだけ費用がかかるのか」「どのくらい貯金しておけば足りるのか」という、お金にまつわる質問です。

結論から言うと、正直なところ私も費用が一体どこまで膨らむのか……正確な数字はよく分かっていません。ざっくり500万円程度は想定して貯蓄していましたが、すでに結構なペースで残高が減りつつあります。

果たして何に使っているのか。

大きく分けると、①学費②住居費③食費④光熱費ほか……あたりでしょうか。

順を追って私の個人的なケースをご紹介します。

①学費

これは学校によって大きく異なりますが、私の通う梨花女子大学(通大)の場合は1学期あたりおよそ650万ウォン。この金額を学期ごとに計4回支払います(2学期制×2年=4回)。

日本の大学の「施設設備費」のようなものはありませんが、入学金(約100万ウォン)は別途支払いました。

この入学金について、実は韓国では以前より「使途が不明だ」という批判の声が高まっており、2023年春から学部生のみ全国的に廃止されることとなりました。

が、残念ながら大学院生は廃止の対象外。ばっちり取られてしまったのです。

このほか、ソウル市内にある通大のうち韓国外国語大学の学費は500万ウォン台、ソウル外国語大学院大学は800万ウォン台……と聞いています(いずれも1学期あたりで入学金は別途。金額が変わっている可能性もあります。参考程度に)。

地方にある釜山外国語大学や済州大学の場合は非常に良心的で、400万ウォン台かそれ以下、さらに外国人留学生対象の奨学金制度もあるという話を聞いたことがあります(これも人づてに聞いた内容ですので、正確な情報は学校に直接問い合わせてください)。

なお、通大(専門大学院)は一般大学院よりも格段に学費が高いことで有名です。

そのぶん授業のコマ数も多いので、「これは教授・講師陣の人件費だ!」と自分を納得させるようにしています(トホホ)。

②住居費

第1回の記事でもお伝えしましたが、私は現在ワンルームを借りて一人暮らしをしています。毎月の家賃+管理費は60万ウォンです。

また、入居時に保証金(日本の敷金のようなもので、退居時に全額返金)を1,000万ウォン入れています。

③食費

ここが一番把握できていないところで、おそらく予想外の支出拡大の主要因なのではないか……と踏んでいます。

家にある食材だけで3食とも済ませる日もあれば、外食が重なり2万ウォンほど支出する日もあり、さらには友人とお酒を飲んで7〜8万ウォン程度飛んでいく日もあります。

そのうえ学期中は「課題に集中する」という名目でカフェをはしごすることもあり、コーヒー代5,000ウォン×はしごしたカフェの数がここに上乗せされます。

一体、いくらくらいになっているのでしょうね。

少なくとも毎月50〜60万ウォンは支出しているような気がします。

当初は自炊をしながら節約を……などとも考えていたのですが、課題が増えるにつれてそのような精神的・時間的余裕は綺麗さっぱりなくなり、「大切なのはお金よりも命(=健康)」という境地に至りました。

現在は食費のことはあまり深く考えないようにして、「時間をかけずになるべく身体にいいものを食べること」に集中しています。

周りの同期も皆似たような状況ですので、ある程度の食費は覚悟しておいた方が良さそうです。

ちなみに最近の韓国は物価上昇の勢いが激しく、スーパーの食材や日用品は日本よりやや高めな印象となっています。

④光熱費ほか

インターネット通信費(Wi-Fi)と水道代はワンルームの管理費に含まれているため、私が直接支払うのは電気代とガス代のみです。

しかも韓国の光熱費は日本に比べてかなり安いので大した負担ではありません。

参考までに2月から6月までの電気代は13,630〜21,900ウォンガス代は5,230〜14,980ウォンでした。

このほか、格安スマホの料金(データ通信容量5GB)6,600ウォン健康保険料(義務加入)71,920ウォンといった毎月の出費があります。

こうして見ると、健康保険料だけが異様に高いですね。ただしその分、病院(内科)の窓口負担額と処方薬はいずれも数千ウォン程度で済んでいるので助かっています。

住民税(市民税)も払いましたが、たったの6,000ウォンでした(おそらく年額)。

このほか、人によっては娯楽や美容、衣料などにもお金がかかります。私の場合は、韓国語学習のための書籍や雑誌の購入費用がだいぶ嵩んでいます。

そうそう、一時帰国の飛行機代も忘れてはいけません。

アルバイト収入をあてにすることなかれ

なかには「アルバイトで生活費を稼ぎながら通学するぞ!」という心積もりの方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら通大の場合それは不可能に近いと考えておいたほうが良さそうです。

それはずばり、「時間的・精神的な余裕が皆無だから」。

周囲にもアルバイトをしながら通学している人はいません。いたとしても、夏休みなどの長期休暇中に通訳や翻訳のアルバイトをする程度です。

渡航前にできる限り貯蓄をしておきましょう……。

奨学金をいただきました

というわけで留学期間中の収入源といえば、長期休暇中のアルバイトと奨学金くらいということになります。

私はこのたび、学外と学内でそれぞれ一つずつ奨学金をいただくことができました(わーい)。

一つ目は「韓国ロータリー米山学友会」による日本人留学生を対象とした奨学金です。

「韓国ロータリー米山学友会」とは、日本での留学期間中に公益財団法人「ロータリー米山記念奨学会」から奨学金を受け、その後韓国に帰国した元留学生たちによる組織です。

日本で受けた奨学金の恩送り事業として、会員や企業からの寄付金をもとに毎年日本国籍の留学生数名に奨学金(200万ウォン)を給付しています。

一次選考(書類)と二次選考(面接)を経て、今年度は5名が選ばれました。

詳しい選考基準はよく分かりませんが、「真面目に学業に向き合っているか」「充実した留学生活を送れているか」「今後も努力を続けるつもりか」といった面を見られていたように思います。

この奨学金の素晴らしいところは、2〜3か月に1回ずつ開催される「奨学金授与式」で会員の方々と交流する機会があるという点です(実は200万ウォンの奨学金も50万ウォンずつ4回にわけて、このときに手渡しで受け取ります)。

数年〜数十年前に日本で留学生活を送ったのち韓国で就職された、あるいは大学で教鞭を執られている先輩方に、韓国での生活、ときには就職活動についての悩みを聞いてもらえるチャンスです。

そして二つ目は大学の成績優秀者を対象とした奨学金です。

梨花女子大学(通大)の場合は、前学期で成績が上位だった学生を対象に授業料の4分の1を免除する奨学金制度があります。

このたび何と奇跡的にこの枠に入りまして、約164万ウォン分の割引を受けることができました(万歳)。厳しい円安環境の中での思わぬ救世主です。

この奨学金は1〜3学期の成績をもとに翌学期(2〜4学期)の学費に反映させるものですので、最大で3回受け取ることができます。

このほかにも留学生を対象とした奨学金制度は、政府が給付するものから居住地の自治体が運営するものまで、実に様々あるようです。

大学院生対象となるとかなり限られてしまうのですが、引き続き情報収集に励みたいと思います。

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以上、お金にまつわる話をかなり赤裸々に綴ってみました。

あくまでも私個人のケースではありますが、参考になれば幸いです。

韓国ロータリー米山学友会の奨学金授与式にて記念撮影(5月)。流暢な日本語と韓国語が飛び交う、不思議な空間でした。

中村かおり

韓日通訳者を目指すライター。マスメディア業界での記者・編集者生活を経て独立後、2018年1月の初ソウル旅行をきっかけに34歳で韓国語学習をスタートさせる。2020年秋から半年間、韓国・ソウルでの語学研修に参加。2023年3月から梨花女子大学通訳翻訳大学院(修士課程・韓日通訳専攻)にて通訳専門訓練中。