【JIF2023】 ジョナサン・ダウニー「AI全盛の時代に通訳者ができること」

ジョナサン・ダウニー

コンサルタント会議通訳者、通訳研究者。自著であるInterpreters vs Machines: Can interpreters survive in an AI-dominated world? (Routledge, 2019)は、AIが支配する世界における人間通訳者の未来を検討した一冊。人間通訳者の価値が社会的に広く認められる未来を形成するために情熱をもって活動中。The Church Interpretingポッドキャスト(ローリン・アルビズが共同ホスト)とInside InterpretingというYouTubeチャンネルを運営。

AI全盛の時代に通訳者ができること

昨今の通訳者は何かにつけて新しいAIツールを学ぶ必要性を訴えられていますが、これとは別に通訳という仕事は完全にAIに委ねればよい、という主張を耳にする機会も増えてきました。しかし、選択肢は本当にこれだけなのでしょうか?

「私たちはAIに仕事を奪われない。奪われるとしたら、AIを活用する人々によってだろう」という主張がある一方で、単に会議が円滑に進行し、予算内に収まることにしか関心がないクライアントもいます。医師との会話を機械が通訳しようが、プロ通訳者または友人が通訳しようが、必要な薬を入手できれば全く気にしない人もいます。彼らのニーズや希望に対しては、どのように対応すべきでしょうか。

研究と講演者自身の最近の経験に基づくこの講演では、通訳の未来について議論する時、焦点を技術から外す必要があると主張します。それよりスキル開発、専門分化、および私たちの仕事がクライアントの関心や戦略にいかにフィットするかに重点を置くことで、より堅固な基盤を構築できると講演者は考えるからです。ただこれを実現するには、私たちが提供するサービスそのものやサービスの提供方法について再考を迫られることに加えて、CPD(プロとしての継続学習)の時間の使い方が根本的に変化することを意味するかもしれません。

日本通訳フォーラム2023