【JIF2023】兼光ダニエル真「AIとネットと無断翻訳に対抗する商業翻訳術~文化の懸け橋の水先案内人としての翻訳家」

兼光ダニエル真

翻訳家。米国ミネソタ大学東アジア学部卒。商業デビューは1988年だが、英訳翻訳活動は1996年より本格化。2000年代からは海外作品の和訳も担当。これまでに多数の日本アニメ・マンガ作品を英訳。翻訳代表作ではアニメ『ガサラキ』、『ラブひな』、『機動戦艦ナデシコ』、『劇場版パトレイバー』及び『劇場版パトレイバー2』(2006年北米発売版)、マンガ『エクセルサーガ』(1~5巻担当)、『イニシャルD』(5~11巻担当)、『ブラック・ラーグン』(1~5巻担当)、『エヴァンゲリオン新劇場版』及びTVシリーズ新世紀エヴァンゲリオン並びに旧劇場版エヴァンゲリオン(ネットフリックス配信版)、『日本アニメ(ーター)見本市』の字幕翻訳を多数担当、NHK放送『龍の歯医者』海外配信版英語吹替監修、『この世界の片隅に』及び『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の英語字幕監修。複数のゲーム、アニメ、マンガ作品の外国語監修や文化考証など。和英・英和両方の翻訳や通訳を行う。

90年代から2000年代にかけて、当時立ち上がったアメリカアニメイベントの多くに通訳・ゲスト対応で貢献。国際オタクイベント協会の設立に関与。

AIとネットと無断翻訳に対抗する商業翻訳術~文化の懸け橋の水先案内人としての翻訳家

アニメやマンガの翻訳は異なる言語を紡ぐだけではなく、異なる文化の間に架け橋を築くことをも意味します。しかし「アメリカ文化」や「日本文化」と言っても一枚岩ではありません。多文化社会であるアメリカには複数の視点がひしめき合い、作品や翻訳に対する要望も色々です。逆に日本の作品も作者は誰と対話をしているのか、創作と言う領域でどんな世界観を共有しようとしているのかを見極める必要があります。これらを意識しつつ、翻訳という架け橋をとおして交流を促すのが翻訳家であるならば、その責任は重大でしょう。

しかしAIによる機械翻訳や検索処理、ネットでの情報の氾濫や専門知識の陳腐化、非公式無断翻訳の横行などによる商業翻訳の価値を疑う人が増えました。翻訳に携わる人間であれば自らの役割や意義について熟知されていても、果たして一般にはその必要性や代替が利かない貢献の度合いはどこまで浸透しているのでしょうか。今回、創作物の翻訳を廻り簡単な整理をしつつ、同時に今後の将来が不安視されている翻訳家の付加価値や可能性について考えていきたいと思います。

日本通訳フォーラム2023