最終回【第10回】通訳案内士のお仕事~北の大地から「北海道のおすすめスポット」

皆様、こんにちは。北海道の通訳案内士・通訳者、飛ヶ谷園子です。この連載では通訳案内士の仕事について、主に北海道での実情を中心に様々な角度からお伝えしてきました。最終回となる10回目の今回は仕事の話を離れ、北海道の通訳案内士おすすめの「北海道の自然を楽しめるスポット」を季節ごとにご紹介します。

梅と桜の春

4月に入って新年度が始まり、満開の桜の映像や写真がテレビやインターネットにあふれています。北海道でもようやく寒さがゆるみ、春を感じる日が増えてきました。それでも道端や民家の庭には雪が残り、花はまだ咲きません。北海道が本格的な春を迎えるのは5月。とても短い春ですが、その分様々な木々がいっせいに花を咲かせ、見ているだけで心が躍ります。特に、梅と桜が同時に咲く光景は北海道ならではの美しさです。そのような場所で様々な梅や桜を見ていると、梅と桜の区別がつかなくなるという不思議な体験もできます(もちろん大きさや枝ぶり、花のつき方などで違いを理解しているつもりでも、わからなくなるのです)。

札幌の北海道神宮や隣接する円山公園など、桜と梅が同時に開花する公園は北海道内にいくつもあります。この時期に北海道を訪れる機会があれば、花を見に出かけるのはいかがでしょうか?全国の桜や梅の名所で見る和の風情に満ちた花とは趣の異なる「北海道の春」を楽しめます。

         

ニセコの夏

いまや世界的なウィンターリゾートとなったニセコ地区ですが、夏も素晴らしい魅力を持っています。登山やトレッキング、ラフティングなどの様々なアウトドア・アクティビティを楽しめますし、羊蹄山やニセコ山系の山々は見ているだけでも心が洗われます。夏でも涼しく爽やかで、ニセコで合宿をする運動部もたくさんあるほどです。ニセコにはチーズやアイスクリームなど美味しい乳製品を扱う店が多く、食の面でも充実しています。

また、冬は吹雪いてしまうと身動きがとれなくなるということをこの連載でも何度もお話してきましたが、夏はそこまでの悪天候は滅多にないのも夏の観光の利点です。曇り空や多少の雨でも楽しめる場所がたくさんあり、写真の神仙沼はどんな天候の時に訪れても神秘的です。

         

紅葉の秋

秋と言えば紅葉です。紅葉も桜と同様に日本各地に名所がありますが、北海道の紅葉は針葉樹と広葉樹が混生する針広混交林で、様々な色が混じったダイナミックでカラフルな紅葉が特徴です。また、場所によって9月中旬から10月下旬までの期間、道外の他の地域に比べて早く紅葉を楽しむことができます。ちょうどグルメ系のイベントが道内各地で多く開かれる時期なので、北海道観光一推しの季節です。

郊外や山間部へ行けば紅葉の名所はたくさんありますが、そこまで行く時間がとれない場合でも、街中にも見どころはたくさんあります。札幌では、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)や中島公園は中心部に位置しているので、仕事や観光の合間に手軽に紅葉を楽しめるおすすめスポットです。

         

とにかく寒い冬

「北海道といえば冬!」と、この連載で何度も言ってきました。冬の魅力を伝える場所をひとつに絞るのはとても難しく(それは他の季節でも同じですが…)悩むところですが、今回は道東にある野付半島を挙げたいと思います。野付半島は日本最大の砂嘴で、多くの種類の動植物と荒涼とした風景が特徴です。一年を通して楽しめるのですが、冬は特にエゾシカを至近距離で見られるスポットとして写真愛好家にも人気です。

ここを冬のおすすめとして選んだのは、風景、動物の他に寒さを味わえることが理由です。海に突き出た細長い半島で、風が強いので雪はあまりつもらないのですが、強風の日の体感温度はとても低いのです。一度そんな日にイギリス人のお客さんを連れていったことがありますが、「北極にも南極にも行ったことがあるけど、ここが一番寒い」ととても喜ばれました。下の写真はその日に撮ったものです。

         

ここまで、四季の自然を楽しめるスポットをご紹介しました。各季節1つずつに絞りましたが、もちろんこの他に素晴らしい場所はたくさんあります。今回は自然をテーマにしましたが、一昨年ウポポイが開業したことで注目が集まるアイヌ文化や、世界遺産に登録された縄文遺跡群、日本遺産で盛り上がる炭鉄港など、歴史や文化面でも楽しめるテーマはたくさんあります。だんだんと暖かく観光しやすい季節になってきていますので、少しでも多くの皆さんに来ていただいて、北海道の魅力を楽しんでいただけたら嬉しいです。

本連載は今回で終わりです。10回にわたってお読みいただき、ありがとうございました。


飛ヶ谷園子(ひがや そのこ)

北海道札幌市在住。全国通訳案内士(英語・ドイツ語)、英語通訳者。北海道通訳案内士協会理事。日本の漫画・アニメに興味のあるお客様とのコミュニケーションを強化するため、現在様々な漫画を読んで勉強中。