第13回|自転車操業者の皆様へ贈る~繁忙期を華麗に乗り切るためのアイテム~

update:2017/10/16

早いもので、今年もあと残り4分の1を切りました。得意分野(業界)によって多少の差はあれど、これから12月半ばまでの期間はフリーランス通訳者にとって一年で最も忙しい時期ではないでしょうか。

タイトルの「自転車操業」は、資金繰りのことではありません。「忙しさのあまり目先の予定しかフォローできない状態」を指す、いわゆる通訳業界用語(?!)ですね。

仕事が終わり、帰りの電車の中で「さ~て明日はどこに行くんだっけ」とスケジュール帳や派遣会社のメールで集合場所や時間など重要事項を確認する。帰宅するとその仕事の資料が郵便受けで待っている。資料を読んだりネット検索したりして明日の準備をし、翌朝仕事に出かける。仕事が終わり、帰りの電車の中で「さ~て明日はどこに行くんだっけ」とスケジュール帳や派遣会社のメールで…以下繰り返し。

ここ数週間、筆者もまさにそんな状態でした。そんなある日、派遣会社からこんなメールが。

****よりご連絡させていただきました、明日******様の件ですが
お客様ご都合により日程が変更となってしまいました。
お待ちいただいたにも関わらず大変申し訳ございませんが、
本件の依頼はキャンセルとさせてください。

このメールを受け取った時、筆者はシンガポールにいました。「明日の*****様の件」で一瞬頭が真っ白!!!その数秒後「キャンセル」の文字を見て息を吹き返しましたが。

ダブルブッキングを前日まで放置するなんて無断欠席や遅刻と並ぶ致命的なNG行為。キャンセルになってメデタシメデタシ!で済ますわけにもいきません。帰国後、パソコンで過去のメールをくまなく見返したところ…半月前にちゃんとお断りしていました。よかったぁ?(感涙)。

要するに派遣会社の勘違い。なんとも人騒がせな話ですが、ダブルブッキングではなかったことに安堵しすぎて腹も立たないわけですよ(笑)。「お待ちいただいた」どころか、引き受けた記憶すらありませんでしたが、ぶっちゃけ断った記憶もなく(笑)ダブルブッキングしていないという確信もありませんでした。なにせ、今日と明日のことしか頭にありませんでしたからね。

さすがにこれは要反省…というわけで、今回のテーマは繁忙期を無事に乗り切るためのさまざまなアイデアでございます。

トップバッターは、まさに冒頭のようなケースで威力を発揮するメールアプリ。

4th Office

iOS/Android・無料

このアプリ、なんと送信者別にメールをまとめてくれるんです。階層構造になっていて、最初の画面には通常のメールアプリと同じく、新着順にメールが並んでいます。

試しにKさんのメールをタップしてみましょう。

Kさんとの過去のメールが「一連のやり取り(スレッド)」ごとに表示されます。右上( )内の数字は各スレッドのメール件数です。

例えば「10月11日(水)」というスレッドを開くと、

そこに含まれる4件のメール(Kさんの問い合わせと私の返信)が表示されます。過去にどんなやり取りをしたか、一目瞭然ですね。

受信メールはPRIORITY(優先)とMUTED(ミュート)のいずれかに振り分けられます。PRIORITYは主に仕事関連の「すぐに返信すべき」メール、MUTEDはそれ以外の「時間のある時に目を通すべき」メール。この仕分けがこれまた新鮮でした。通常は「スパム」と「そうでないもの」に分けられ「そうでないもの」の中に仕事関連のメールとそれ以外(お店や銀行からの連絡など)が混在していますから。

使い始めはMUTEDもこまめにチェックしないと、たまに仕事のメールが入っていたりするので要注意。その場合はUNMUTE(デフォルト設定では右にスワイプ)しましょう。これ以降この送信者からのメールはPRIORITYに入ります。これを繰り返しているうちにアプリが訓練され、仕分けの精度が増していきます。

これさえあれば、冒頭のようなケースで「明日の集合場所の連絡」が来た!なんてホラーな状況でも、メールの証跡をいち早く確認してわが身を守るのに役立ちますね。

仕事や忘年会で帰りの遅い日が連続すると、困るのが宅配便の受け取り。わが家は宅配ボックスがないので何かと一苦労です。ネット通販で買い物をしたら、お店にメールして発送方法を普通郵便に変えてもらったり、週末の午前中に配達時間を指定したり。仕事の資料は「不在時は郵便受けに投函」と封筒に明記するよう送り主にお願いしています。

郵便受けに「不在時はポストに投函ください」と貼り紙をしたこともありますが、残念ながら効果なし。宅配業者に問い合わせたところ「配達中の荷物の所有権は送り主にあるため、紛失のリスクを伴う変更は、たとえ受取人の指示でも従えない」との回答でした。こういう指示をするなら送り主を通じて行わなければならないとのこと。ふむふむ…勉強になります。

最近では宅配各社が会員サービスとアプリを導入し、ずいぶん便利になりました。会員登録すると、自分宛ての荷物が発送された時点でメールが届くので、メールのリンクから公式サイトに飛んで配達時間を指定できます。こうすれば「不在票入ってる → 当日の再配達受付終わってる(泣)」なんて事態も避けられますよね。

宅配各社の公式アプリは以下の通り。

ヤマト運輸

佐川急便

iOSAndroid

日本郵便

西濃運輸

iOSAndroid

なかでも、筆者が個人的に最も評価しているのがヤマト運輸の「お受け取り場所変更」サービスです。帰り道のコンビニなどを受取場所に指定すれば、帰宅がたとえ深夜になってもその日のうちに受け取ることができて大助かり。店舗によって配達時刻が変わってきますので「翌日以降」などとあっても諦めず、他のお店を当たってみましょう。受け取り手続きもチェーン毎に異なりますが、Loppiを使うファミリーマートが最もスムーズな印象です。

忙しい時期は体調も崩しがち。そんな時、筆者が重宝しているのが…なんとヘアドライヤー!

ドライヤーを髪を乾かす以外の目的で使うようになったのは、20代の頃からです。当時は冷え性がひどく足が冷たくてなかなか寝付けませんでした。整体の先生から「電気毛布は体温調節機能を狂わせるから止めたほうがいい。辛かったら寝る前にドライヤーで周りの布団ごと足の先を温めなさい。いったん温まれば朝まで持つから」と教えられたのがきっかけです。

それ以外にも、知人から「蚊に刺されたらドライヤーが効く」と聞いてやってみたら確かに効果があったり(かゆいところにドライヤーの熱風を当て「あぢぃ!」となった瞬間に当てる位置をずらし、それを何度か繰り返します。かゆみ成分に含まれるタンパク質が50℃程度の熱で変性する、というのが理屈だそうです。やけどに注意。実行は自己責任でお願いしますね)。

ある日、風邪の引きかけで「ゾクゾクッ」と来た時のことです。ふと思いついてそのゾクゾクの場所、すなわち肩甲骨の間辺りを、例の「あぢぃ!→ずらす→あぢぃ!→ずらす」という調子で温めるようにしてみたんです。すると「ゾクゾク」はどこかに行ってしまい、その冬は風邪一つ引かず元気に過ごすことができました。それ以来、もう何年もドライヤーのお世話になっています。

とはいえ、このような話を公式の場で書くのはさすがに憚られていたのですが・・・先日、こんな本を見つけました。

『病気にならない体をつくる ドライヤーお灸』(川嶋朗・著/青山出版)

著者の川嶋朗先生は、医学博士。北海道大学医学部を卒業し、東京女子医科大学大学院を修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院留学を経て、現在は東京女子医科大学付属の自然医療研究所クリニックの所長さんでいらっしゃいます。

この本(p.47)によると「ゾクゾクの場所」は漢方医学では「風門」と呼ばれ、ここをドライヤーの熱風で温めることで風邪を予防できるんだとか。筆者のインチキ臭い話がDr.川嶋のお墨付きで一気に信憑性が増しましたね(笑)。

ポイントは、最初にゾクゾクっときた時に対処すること。こじらせてしまってからでは、これしきの手当てでどうなるものでもありませんからね。日頃から身体の声に耳を傾け、早期発見と予防を心がけましょう!

この本には、歯痛、二日酔い、薄毛などという、冷えとはおおよそ結びつかないような症状の対処法も書かれており…あ、繁忙期も関係ないですね(笑)。

最後に余談ですが、実は冒頭の仕事、そもそも「仮予約」だったんですよね。「仮」のまま前日まで放置した場合、派遣会社はこんな風にメール一本でキャンセルできるのに、通訳者が同じことをしたら大問題。この非対称性こそ、現在の通訳業界が抱える一番大きな「闇」であると個人的には考えています。

「仮予約」に法的な拘束力はありません。でも、お客様や派遣会社の立場で「前日に替わりの通訳者を探すのは大変だ」「とんでもないことをしてしまった」と考えてしまうのは筆者だけではないはず。お客様や派遣会社も「明日は会社に来なくていいから月給から1日分マイナスします、と言われたらどうだろう」って想像だけでもしてみてほしいなぁ、と思います(笑)。

…というわけで、今回は「自転車操業者の皆様に贈る~繁忙期を華麗に乗り切るためのアイテム~」と題してお届けしました。これでクリスマスまで元気に走り抜けましょう!

平山敦子

Atsuko Hirayama

会議通訳者。得意分野は司法、軍事、IT、自動車など。元米国大統領、経済学者など著名人講演の同時通訳も多数。この仕事を目指したきっかけは大学在学中のアルバイト。スポーツイベントのバイリンガルスタッフとして働いていたが、ある日現役のプロ通訳者と同席、その仕事ぶりを目の当たりにし衝撃を受ける。

「私もこんな風になりたい!」とアルバイトに精を出す(?!)うちに、いつしかそれが仕事に。通訳界では知る人ぞ知るガジェットおたく。パフォーマンスを最大化してくれる優れモノの道具を求め日々研究中。