【第14回】シリコンバレー徒然通訳テクノロジーだより「Google カレンダーをさらに便利に使う方法 その1」

皆様お元気でお過ごしでしょうか。アメリカでは関税のドタバタや公務員のレイオフなどがあり、通訳現場でも「今は価格を決めるのは無理!」とか「少なくなった人数で多くの仕事をカバーしているから最終日は早く帰らせてほしい」とか、ダイレクトな影響を感じることが多くあります。
また、出張でよく行く空港でトラブルが発生しているのもハラハラします。カンファレンスのなどは家からリモート通訳するケースも増えて臨場感が無いし色々不便だったりもしますが、安全を考えると良い面もありますね。

さて今回は Google カレンダーの、十分活用していないかも知れない機能に注目します。ちょっとした事で少しの効率改善につながる点を複数書きました。短い記事になるかと思いきや、書ききれないほどあったので2回に分けての記事になります。以下に目次を乗せるので、必要な個所だけお読み頂いても良いかと思います。


<目次>

  1. 新規予定の作成方法
    1.1. カレンダー表示中にショートカットキー‘c’
    1.2. URL “cal.new”
    1.3. 週表示にしてから入力 (時間指定が簡単になる方法)
    1.4. Gemini に作成してもらう①
    1.5. 有料版のみ – Gemini に作成してもらう②
  2. 予定の変更もドラッグ&ドロップで
  3. 異なるタイムゾーンの予定の扱い方
    3.1. 異なるタイムゾーンの通訳依頼があったら
    3.2. セカンダリタイムゾーンの設定
    3.3. (異なるタイムゾーンの)相手に予定一覧を伝える方法
  4. おまけ

1.新規予定の作成方法

皆さんは新規予定を作成する際に、デフォルトの月表示のカレンダーから予定の日をクリックして時間などを入力していますか? それ以外にもいくつかの方法があり、ほんの少し手間が省けるかもしれません。以下に5つの方法を示すので、その時に便利な方法をお使いください。

1.1. カレンダー表示中にショートカットキー‘c’

カレンダーを表示している画面で “c”(恐らく create の c)を押すと、新規予定作成の画面が表示されます。自動で現在の日時が入ります。

1.2. URL “cal.new”

カレンダーを表示していなくても、URLに “cal.new”と入力すると、先にカレンダーを開く必要なく新規予定を作成できます。タイプが苦にならない短さですが、私はブラウザのブックマークに「新規予定作成用」のブックマーク(下図の赤枠)を置いてクリックするだけで済むようにしています。ちなみに赤枠の左隣のアイコンはカレンダーを開くためのブックマークです。

ブックマークを作るには該当画面が開いた時に星アイコンからブックマークするか、もしくは以下のように cal.new を登録して下さい。

1.3. 週表示にしてから入力 (時間指定が簡単になる方法

カレンダー画面はデフォルトでは月表示になっていますが、ショートカットの w キーを押すと週単位の表示に切り替わり左側に時間軸が表示されます。

↑月表示↑週表示


予定を入れる日の開始時間(下図矢印の下あたり)をクリックし、終了時間までドラッグしてください。(下図では左の赤枠内10:00 AM をクリックし 1:30 PM までドラッグ) すると、予定に自動的にその時間を入れてくれる(下図の右の赤枠内)ため、予定作成の時間を入力する手間が省けます。設定できるのは15分きざみです。

1.4. Gemini に作成してもらう①

カレンダー画面右上の9つの点のアイコンもしくは、gemini.google.com を開き、「@Calendar 8月1日の9:00-14:00のA社会議をカレンダーに入れて」等と自然言語で入力すると、カレンダーに予定が作成されます。異なるタイムゾーンの場合は「イギリス時間の」などで指定すると、自分のタイムゾーンに合わせて作成されます。「@Calendar」 は、Google Calendar 向けに指示していることを明確にするものですが、大抵の場合は付けなくても大丈夫です。打診のメールの内容をそのままコピペして、Gemini に予定を作らせることもできます。楽ですよ~。(下図参照)

異なるタイムゾーンの日時で書かれている内容から Geminiに予定を作らせる場合、モデルは計算の得意な “Pro”(2025年5月時点では 2.5 Pro) を使うことをお勧めします。デフォルトの“Flash” は時差の変換を間違える場合があります。無料版ユーザーは Pro の使用回数制限がありますが、現時点では1日に数回は使えるようです。

1.5. 有料版のみ – Gemini に作成してもらう②

残念ながら有料版のみの機能ですが、さらに楽な方法があります。メール画面の右上で Gemini のアイコンをクリックし、「このメールの内容の予定をカレンダーに入れて」と書くだけでカレンダーを開くことなく予定が作成されます。初めて Gmail とカレンダーを連携させる際にに、Google Workspace のスマート機能を有効にするようにメッセージが出るかもしれません。その場合はメッセージに従って設定から有効化すると使えるようになります。

2.予定の変更もドラッグ&ドロップで

予定の日程や時間が変更になった時は、予定を開いて日時を選び直さなくても、ドラッグ&ドロップで移動させることができます。会議の時間が移動した場合などに便利です。予定の時間が1時間から2時間など長くなったり、短くなったりした場合も終了時間をドラッグすることで時間の長さも変更できます。

月表示の時は同じ時間帯で別の日に移動することが可能、週表示にすれば時間帯の移動も可能です。

3.異なるタイムゾーンの予定の扱い方

3.1. 異なるタイムゾーンの通訳依頼があったら
例えば日本在住の通訳者に「7月1日のアメリカ太平洋時間(西海岸時間)17時~18時の会議」など、異なるタイムゾーンの会議の打診があったとします。その場合は、頭の中で日本時間に変換しても良いのですが、とりあえず「7月1日17時~18時」でカレンダー予定を作成し、「タイムゾーン」のドロップダウンリストから「アメリカ太平洋時間」を選択して予定を保存してみてください。
すると、時差を変換した「日本時間の7月2日の9時~10時」の予定として保存されます。カレンダー内には自分のタイムゾーン(この例では日本時間)で表示されますが、時間変更などで編集するために予定を開くと作成時に指定したタイムゾーン(この例ではアメリカ太平洋時間)で表示され、再編集の混乱も防げます。
私は確定案件だけではなく、打診の時点で一旦予定を入れてみて重複がないかを確認するためにも使っています。特にサマータイムの切り替えのある3月や11月頃は、時差の計算など勘違いしやすいためこの機能を使うと安心です。

3.2. セカンダリタイムゾーンの設定

海外在住の通訳者には特に便利な機能として、カレンダーに2つ目のタイムゾーン(セカンダリタイムゾーン)を設定することが可能です。カレンダーのギアアイコンから設定メニュー画面に移り、「タイムゾーン」から居住地のタイムゾーンと、日本などの良く使うセカンダリタイムゾーンを設定してみてください。ラベル(下図)はデフォルトでは「GMT+09」などの直感的ではない表示になるため、「JST」(Japan Standard Time)や「PT」(Pacific Time)など一目で分かるラベル付けをお勧めします。

セカンダリタイムゾーンを設定(上図)すると、週表示モードや1日表示モードにした際に、下図のように左側に二つのタイムゾーンの時刻が表示されるようになります。青枠内が設定したラベルです。

異なるタイムゾーンの予定をクリックで入力する際も、正しい時間を確認できるようになります。また、両タイムゾーンでの現在の時刻も表示されます。(左下赤枠)

3.3. (異なるタイムゾーンの)相手に予定一覧を伝える方法

オンライン会議の設定などで、「今週の空いている時間を全て教えて下さい」と言われたら、どのように伝えるのが簡単かつ間違いない方法でしょうか。
左下の図のようなバラバラなスケジュールだと空き時間を書き出すだけでも手間がかかり、間違える可能性もあります。異なるタイムゾーンにいる相手の時間で伝えるとなると、さらに大変です。ここでは自力で書き出さずに対応可能な時間帯のリストを作る方法を説明します。(同じタイムゾーンの相手に伝えたい方は、タイムゾーン切替の部分は飛ばして読んでください。)
本当は Gemini に「今週の空き時間を箇条書きにして」と頼みたい所ですが、現時点ではうまく行かなかったので以下の方法を使っています。

     
↑週表示↑スケジュール表示

まずは「スケジュール表示」に切り替えます。

画面右上のドロップダウンをクリックして「スケジュール」(右図赤枠)を選択するか、ショートカットキー a を押すとスケジュール表示(上の右図)に切り替わります。

この時点では自分のタイムゾーンでの予定が表示されています。そこからまたギアアイコンをクリックして設定画面に行き、表示をセカンダリタイムゾーンに切り替えます。(下図右側の上下矢印をクリックする)

すると今度は、下の右の図のようにセカンダリタイムゾーンでのスケジュールが表示されます。セカンダリタイムゾーンは予定を伝える相手(クライアントやエージェントなど)の地域に合わせて調整します。

↑ プライマリタイムゾーンのスケジュール↑セカンダリタイムゾーンに切り替えたスケジュール

メールなどの文字で伝えなくても良い場合は、予定の内容を見えないように日時だけのスクリーンショット(下図)を取って画像で送っても良いでしょう。(Windows の場合は、Windows キー + Shift + s で範囲指定のスクショが可能)



文字で伝えたい場合は、スケジュールの該当部分(上の右図内)をドラッグして選択し、コピペすると以下のようになります。

=====================

30
6月, 月
01:30~08:00
外出
Haruka Kuroda承諾
6月 30日 (月曜日)
16:00~23:00
休息
Haruka Kuroda承諾
1
7月, 火
01:00~09:00
オンサイトの仕事
Haruka Kuroda承諾
7月 1日 (火曜日)
16:00~23:00
休息
Haruka Kuroda承諾

~以下省略~
=====================

しかし、このままでは見づらい上に予定の内容が見えてしまいます。そこで、Geminiにこの情報をコピペして、「日時が分かりやすい表形式に整えて下さい」と頼みます。
すると以下のような表を作ってくれます。

A~C列のみをコピーして、再度 Gemini に「1日ごとに読みやすく箇条書きにして」と頼むと、以下のようになります。
=====================
2025年6月30日(月)

  • 01:30~08:00
  • 16:00~23:00

202571()

  • 01:00~09:00
  • 16:00~23:00

202572()

  • 04:00~05:00
  • 07:00~08:00
  • 09:00~10:00
  • 16:00~23:00
  • 23:45~翌03:45

~以下省略~
=====================

これをメールにコピペして「対応不可の時間帯」として伝えることができます。

さらにこれ以外の時間を Gemini にリスト化させて「対応可能の時間」として伝えても良いですね。その場合は計算が関わるので Pro モデルの使用をお勧めします。(間違えられたら怖いので私はやりませんが…)
手順として書き出すと長々とした文になってしまいましたが、慣れればすぐにできますのでお試しください。

ちなみに、この例では睡眠時間を「休息」として一時的に毎日繰り返しの予定に含めています。異なるタイムゾーンの相手の時間に変換しても、対応不可の時間として伝えられるからです。ただし、カレンダーに常に睡眠時間が表示されると邪魔に感じるので、リストを作り終えたら削除した方がスッキリするかと思います。

4.おまけ

肩こり&腰痛に効くマッサージガン

日本の家電量販店でお勧めされた Doctor Air のエクサガンという、良い感じにマッサージしてくれる製品です。ボールペンほどの長さと小さくて出張にも持って行きやすく、長距離フライトの後や一日の終わりに使っています。先ほど製品ウェブサイトを見たら、なんと顔にも使える(!?)と書いてありました。顔をこの勢いでマッサージするのは怖い気がしますが…。肩こり腰痛気味の方(それは私)にはお勧めです。

次回も引き続き Google カレンダーネタで引っ張ります。お元気でお過ごしください。


黒田玄 (くろだはるか)

慶応大学環境情報学部を卒業後、ソフトウェアエンジニアとして外資系IT企業の開発部門で働いていた時に業務上必要に迫られてやってみた翻訳が楽しくて語学の道へとキャリアチェンジ。 前職経歴やシリコンバレーという拠点の土地柄、スタートアップから大手までIT関係の案件、そして意外と多い製薬や医学関係の案件を中心に活動中。通訳仲間にテクノロジーの活用を広めることを喜びとしている。趣味: ダンス、サッカー、料理(やる気に波あり)、読書。