【JIF2025】岩田晶子「分かったつもりを認識しよう――インドネシア語コミュニティ通訳の事例で」

岩田晶子(いわたあきこ)
インドネシア語通訳歴20年以上。外務省通訳研修講師、名城大学外国語学部非常勤講師。二国間会議や省庁での会議通訳から医療・司法等のコミュニティ通訳まで幅広く担当し、近年はウェブ会議通訳にも多数対応。インドネシア大学への留学、京都大学大学院での地域研究を通じて培った社会文化的背景への理解を基に、文脈に応じた的確な通訳を心がける。通訳者養成や教材開発では、現場経験を活かした実践的な研修プログラムを提供。AiMISインドネシア語医療通訳者。たまに帰省する娘とのおしゃべりが何よりのリフレッシュ。
分かったつもりを認識しよう――インドネシア語コミュニティ通訳の事例で
本講演では、インドネシア語コミュニティ通訳における「わかったつもり」のリスクと、その対処について実例を交えてお話しします。
インドネシア語は接辞による意味変化や社会関係に応じた表現の使い分けなど、文脈によって適切な表現が大きく変わる言語特性を持ちます。そのため、基本的な語彙は理解できても、派生語や社会文化的含意を十分に把握できていない場合、医療や司法の現場で深刻な誤訳が生じる可能性があります。
講演では、医療通訳の現場で生じる典型的なエラーパターン(語彙意味エラー、文法エラー、社会文化的エラー)を対話例で具体的に提示し、これらがコミュニティ通訳の正確性や中立性の原則とどう関わるかを検討します。また、体験型e-ラーニング教材のデモンストレーションを通じて、学習者の思い込みを減らす工夫を施した即時フィードバックによる新しい学びの形を提案します。
インドネシア語通訳者をはじめ、他言語の通訳者、通訳コーディネーター、自治体・大学関係者など、コミュニティ通訳に関心をお持ちの方が「現場で必要とされる通訳力」を再認識し、今後の人材育成のあり方を考えるきっかけを提供します。